―――アリアスの様子が、おかしい。
ボソリとそう言うと、シャルはどこがです?特におかしい点は僕には見当たらないですが…と問いかけてきた。
それに小さくため息をつく。
「ずっと部屋かキッチンに立て籠ってるのが、お前にとって普通なのか?」
『…そういえばそうですね』
漸く僕がいった言葉の意味を察し、どうしたんでしょうと言うシャルにため息を吐いた。
「わかったら僕は今ここにはいない。」
アリアスのやつ、ここ数日僕がキッチンに入ろうとすれば晶術を使い追い出してくるわ部屋の入り口には罠らしきものをおくわ…
そのせいで僕は彼女と会える時間がかなり少ない状況、そろそろ彼女の顔を見たいのだが、彼女は今日も自室に籠りきり。
今日も会えないのだろうかとため息をもう一度吐いた。
アリアスと僕は幼馴染みで、小さい頃からよく一緒にいた。
明るく行動的ながら聡明な彼女は僕をいつも引っ張っていってくれた。
失敗すれば次はこうしたらいいと甘やかすだけじゃなくアドバイスをしてくれたし、辛いときはそばにいて優しく僕を抱き締めて支えてくれた。
そんな彼女に惹かれ、親友と言う立場から先の関係に進展したいと思ったのは、当然だったのかもしれない。
だがしかし、現実はなかなかうまくいかなくて、僕と彼女の関係はいまだに悪くて同僚、良くて親友のままだ…。
いつになれば進展するのかわかったものではない。無論僕も努力をしてはいるが、彼女の鈍さはいつもその努力を粉々に粉砕してくれる。
この間なんて…
『坊っちゃん思考を飛ばすのはいいんですが…、』
アリアス、出てきましたよ?
その言葉でばっと後ろを振り返ると確かに、手に何かを持った彼女が自室から出てきた。その顔はとても満足げで、達成感にあふれている。
何を作っていたか気になるが今はそれより彼女の格好のほうが気になった。
彼女はいつもの僕と同じ客員剣士の制服ではなく、黒と紫がメインのレースや装飾をあしらった魔女のような衣服を身にまとっている。
その姿に思わず視線をそらしてしまう。
…弁明させてもらうが、決して似合ってないわけではないのだ、むしろ似合っている。
だが…、その衣服の露出度が高いのだ。
チョーカーから衣服へつながるようになっているその衣服は、普段はあまり見えない彼女の白いうなじと長い脚をさらしている。
脳内に焼きついたその映像を消し去ろうとぶんぶんと頭を振っていると彼女は階段を下りていく。
(まさかあの恰好で外へ行こうというのか…!?)
それはまずい、いろいろとまずい。
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