とても美しい人でした。
漆黒の鴉濡れ羽の髪に藍に近い紫色の瞳。白いシルクのような肌に瞳の色より薄い菫色のハイネックに一部にある赤色が鮮やかな青のジャケット。
赤の布地に縫われた金色の刺繍と同色の彼のその白い耳に掛けてあるイヤリングが高貴なあの人の雰囲気をよりいっそう高めていた。
下は白タイツ、青のブーツに同色のレッグウォーマー、そして薄紅色の長いマントを羽織って…
まるでお伽噺の王子様がそのまま絵本から出てきたかのような美しさをもった少年でした。
彼は客員剣士として国に使える剣士でした。
とてもとても優秀なお方でした。
親しかみない人間を見返すために人一倍努力をなさってました。
そんな完璧な彼を、私は側でただ見守っていました。
何もせず、ただただ見守るだけ。
支えられるなんて烏滸がましいことは言わない。
だって彼を支えられるのは彼の世話係のメイドと彼の腰に吊るされているあの剣だけだもの。
ただの幼馴染みが彼の支えになれるわけないわ。
← →