待ちに待った休日とは言え、こういった時間の使い方はどうよ、と猛省すること数分。連日連夜の仕事仕事で、疲れきった体をここぞとばかりに休めて、睡魔に誘われるように夢の国へと旅立ったのは一昨日。休みがうまいことに重なった、仕事終わりの三連休。いくら疲労がこれでもか、と空高く積み上げられていたとはいえ、一日寝れば充分だ。


残りの二日?聞くな、馬鹿。


何にも縛られることのない自由時間。喜んでいたのは自分よりも同居人の方だ。恋人らしく何処かに出かければいいものの。結局家の中で二人で過ごしているだけ。もっと詳細に語れば、乱れたベットの上でお互いの身体を獣みたいに貪りあっているだけ。

自分の年を考えろ。もう三十歳だぞ。こんなふうに情欲にまみれた怠惰なひととき。許されるのは二十代くらいまで、と結論付けて、雪名がまだ二十代前半なことを思い出す。ああ、そうだ。彼はいたって正常。普通の青年男子。けれどそれに付き合っている俺は異常。今まで男しか好きになったことのない、異常なおっさん。あれだ、異常と正常が付き合ったら最後は両方とも異常になるんだな、うん。と考えて、僅かに頭が痛くなった。

少しでも離れようとすれば腕を掴まれて引き寄せられて、背後を見せれば首に腕をまわされ頭蓋骨に口付け。額に落ちる唇を跳ね除ければ、唇に差し込まれる舌。お互い、猫みたいにぴちゃぴちゃと音を立てて舐めあって。

けれど休みの時間なんてあっという間。赤い数字のあとには必ず黒い数字がやってくる。そうして巡ってくる次の赤い休日は休めるか、と言えば、これから先は最低二十日程度は無理だろう。

休日というものは長ければいいってもんじゃない。長ければ長いほど、最近やけに年下らしい表情を見せるようになった雪名に、良いように使われてしまうから。何もそれが嫌だというわけではない。けれどその辺は、大人として一応自制しなくてはならないことだと思うのだ。…一応は。

だというのに、理性よりも心は正直。次の休みは何日後、なんて指折り数えている。正直に言えば、待ち遠しい。思う存分触れ合うことの可能なその瞬間を、表面には浮かべずとも、首を長くして待っている。


長けりゃいいってもんじゃないけれど、長くなるのだから仕方ない。


後ろ髪を引かれつつ、仕事に向かうために部屋を出ようとしたときに、雪名が言った。木佐さん、好きです。何かを期待したような煌々さを浮かべる瞳に、俺は盛大な溜め息をついた。


今の俺は、首が長い。



今の雪名は、耳が長い。




ウサギ


待ち遠しいから、長くなる。君の「好き」を待っている。
(ウサギ)
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