洗濯機の中からやけに縮小された衣服の塊を取り出して、無造作に籠に投げた。冬にしては洗濯日和な天候で、その穏やかな空気に包まれてか、傍では吉野が死んだように眠りこけている。一枚一枚衣服を引き剥がして、ハンガーにかける際になって気づいた。手にしていた彼のポロシャツのボタンが取れかかっていること。


いくら自分が好きで人の家の家事をしているからとはいえ、それがちょっと面倒になる時だって実はある。見て見ぬふりをしようか。少し迷ったところで思案した。もし、このボタンがこのまま取れたら吉野はどうするだろう?まさかボタン一つなくなったところで唐突に捨てはしないだろうけれど、だからと言って積極的に自分から直す性格でもないだろう。結局自分の仕事が増えるだけかと思い直して、ソーイングセットを取り出した。何かの間違いで裁縫の真似事をした吉野が、指先に針を刺してしまうのは目に見える光景。大事な商売道具とも呼べる彼のその掌を、自分の怠慢で傷つけたくはないと思う。


緩くなった紐を解いて、新しい糸でボタンを服に結びつける。布にぷすりと針を突き入れながら、本当はこのボタンをちぎり捨ててやればよかったのにと考えなくもなかった。つかず離れずなこの関係に。だというのにひとたび離れそうになるとこうやって、自分から慌てて繋ぎとめてしまうから。自分と彼を結ぶ糸は、赤ではなくて未練の色。面倒なのは、一体誰?


恋とは大概愚かだね。




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