出現譚1

砂漠の中に特別な砂が一粒ありました。神様は言いました。それを探してごらんなさい。もし貴方がそれを見つけることが出来たなら、永遠の幸せを貴方に約束しましょう、と。一人ではこの膨大な砂粒の中、たった一つの特別な砂など見つけることは出来ません。貴方は言いました。だから神様は貴方に十人の友人を与えました。

十人だけでは足りません。貴方の主張に神様は百人の知人を与えました。百人だけでは足りません。貴方の言い訳に神様は千人の人間を与えました。

神様が与えてくれた人間で、砂漠の中を探しました。何分も、何時間も、何日も探しました。けれど特別な砂など見つかりません。砂漠は余りにも広すぎて、この人数では見つかりません。兆を超える人間を、どうぞ私に与えてください。貴方は求めました。

神様は言いました。最早それは出来ないと。探す人間を増やせば増やすほど、特別な砂粒は「高確率」で見つかるでしょう。けれどそれを見つけるのは神様が与えた人間で、貴方が見つけだす可能性は皆無でしょう。

貴方は神様に求めるばかりで、地を這いつくばり探そうともしません。与えた人間を我が物と勘違いし、見つけた特別な砂粒すらも探しあてた人間から奪いとろうとするのでしょう。

そんな人間が幸せになんてなれません。幸福の欠片である特別な砂粒を、見つけれられる訳が無いのですから。



◆No.2

籠の中の蝶は、いつも空に飛び立つことを夢見ていました。だから飼い主は蝶に告げました。お前はこの籠の中から一生出ることは叶わないと。それでも籠の中の蝶はいつか空を飛べると信じていました。釘を刺すように飼い主は言いました。お前は特別な蝶だから、外では決して生きられぬと。


蝶は籠から飛び出しました。そしてすぐさま蜘蛛の糸に捕らわれました。蜘蛛は嬉しげに笑いました。


殺すため?羽を千切り手足をもぎ取り食らうため?生きる姿をそのままに焼き付けるため?


救いの意図も蜘蛛の糸


◆No.3

始まりの地には沢山の私がいた。穏やかに暮らす私達は、ある日突然振り分けられた。一人目の私は赤い道。二人目の私は青い道。三人目の私は緑の道。それぞれ道に意味も分からず歩み始める。そして最後の私は黒い道へと導かれた。私は何故この道を歩かねばならないのだろう。考えた途端、声が聞こえた。


上。


◆4

十色の紐と一つの宝箱が用意されていました。好きな色を取りなさい。少女は言いました。だから存在した十人は、それぞれ自分の好きな色を選び手に取りました。一斉にその紐を引きなさい。少女は命令しました。全ての紐の行く先は、あの一つの宝箱でした。少女は哂いました。

繋がっていないと誰が言った?


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