ベランダで布団をパンパンと叩いていると、インターフォンが鳴った。いそいそと玄関に出てみればそこには買い物帰りの雪名の姿。今年大学生になったばかりの彼が同じく大学三回生を迎える自分の部屋に遊びにやってきた。けれどそれは、そうしろと前日に約束したというだけの話だ。


適当な惣菜を買ってこい、と命令宜しくお願いしたはずなのに、中にはトマトやら胡瓜やら茄子やら諸々。おい全部夏野菜じゃねーかと文句を言えば、今から惣菜を俺が作るんですよと雪名は言いのけて笑う。悔しいが料理の腕は雪名が上。木佐さんは他の家事でもやってて下さい。言い終えるタイミング良くピーピーと洗濯終了のお知らせ。


縮んだ洗濯物を伸ばしてベランダの物干し竿に次々と干していく。部屋に差し込む直射日光をカーテンのように服が遮り、それがかえって清々しい。蒸し蒸しとした熱気のせいで滴り落ちる汗を手の甲で拭う。あ、掌も汗だらけだ。


ふう、と一息ついている所に雪名が昼食を持ってやってきた。素麺に胡瓜と茄子の浅漬け、トマトと胡瓜のサラダ、茄子のそぼろあんかけ。夏バテに弱った体には随分優しそうだ。テーブルの上で向かい合ってお互いに頂きます、と声を掛け合う。何も食べたくないと豪語していたのが嘘みたく喉に食べ物がするすると通る。火照った体にも丁度良い。


「しかし暑いな」
「今日は三十半ば近くまで気温が上がるみたいですよ」
「蒸し焼きにされるのかー。あー、くそ、外行きたくない」
「行かなくてもいいです。俺DVDとか沢山借りてきましたから」
「そういうところ用意周到なのな」
「任せてください」
「褒めてないっつーの」


結局午後は雪名と一緒にDVDを見ることに相成り。しばしじっと画面に見入る時折、ちらりと雪名を見上げる。真っ直ぐな瞳。何照れてるんだ、俺。目を逸らして麦茶をあおり、グラスの中でからりと氷がかち割り鳴った。

惚れ直さなくても十分惚れてるっての!


風呂から上がった雪名をよそ目に、窓を開けると心地の良い風を感じた。夜になり気温は若干下がったとはいえ、まだまだ暑い。それでもふいに冷たい空気が部屋の中に流れ入り、それが心地よくて酷く気持ちいい。


大きなタオルを使ってごしごしと雪名の髪を拭いてやる。痛いです、木佐さんと文句の言葉はオール無視。乾いた髪をさらりと撫でてやれば、その腕を雪名のそれによって強く掴まれた。


熱っぽい雪名の視線に一瞬悩み、結果数秒後に勢いのまま雪名に抱きついた。


本当は暑いのは凄く嫌いなんだけど、お前は大好きだから仕方ない。


「雪名」
「何ですか?」
「ほどほどにな」
「木佐さん相手に無茶言わないでください」


するりと服を脱がされて、熱い体が重なり合う。押し付けられた唇を差し出した舌で舐めとって、緩くそれらを絡ませる。薄く開いた瞳が雪名の姿を捕らえて、腕を伸ばして彼の背中を引っ掻いた。


今日は熱帯夜。



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