「俺って結局…
トリのこと恋愛対象にしてたってことなのか!?」




この恋には気付かなかった



修羅場明けのある日のこと。
今回の修羅場は過酷であったが
そんなに疲れも溜まってなかったので

俺はゆっくりと。
ソファーに寝転がって
ザ☆漢の最新刊を読んでいた。


(あーやっぱ漢はサイコーだなあ!!)


流石とも云える絵のレベルに
絶妙なコマ割り
そして最高のギャグ。

これだから
ザ☆漢は面白すぎて堪らない。
基本的に飽き性な自分が、
幾つ巻を重ねても買おうと思えるのは
この面白さがあるからなのかもしれない。


***


俺が今持ってるのは
優が買ってきてくれた、
ドラマCD付の初回版。

最近カラーやアニメ化に関する雑事で
自由業とは云え滅多に休みが貰えなかった俺は
すっかり漢のコミックチェックを忘れていて

そんな中で優は
「たまたま本屋に寄ったから」
と自分の分までコミックを、
しかも初回版を買ってきてくれたのだ。


それも「いつも頑張ってるの知ってるから
タダでやるよ」と
フリーでアシスタントをしているから
下世話な話優の方が
お金が安定していないはずなのに
代金を請求してこないという
素晴らしき心遣い(?)までしてくれた。


「ありがとー!優!
ホント、
持つべきものは友達だよーっ!」

そう云って優に抱き着いてるところを
タイミング悪く羽鳥に見付かって
散々な目に遭ったのはつい先日のこと。





そんなことを思い出していたら

ふと、
本当に突然ある考えが浮かんできた。







(俺って誰とでも、
ああいうこと出来る訳じゃないよな…?)






それは以前の修羅場明け
羽鳥と喧嘩して悶々としてた時も
思い浮かんだ考え。



元々女の子としか付き合ったことないノーマルだった自分が、
今こうして
羽鳥とそう云うカンケイになったのが
考えられなくて


今でも度々。
羽鳥がいない1人の時に思うのだ。





(けど前に優とTVに映ってた俳優さんで
想像してみたけど無理だったもんな…)



今まで28年間。
まさかずっと一緒の幼馴染みが
ホモだなんて思ってもみなかったから

こういうことはあまり考えたことなかったけれど。





トリに彼女が出来た時
微かに感じた胸のチクチクも

トリと遊べなかった時に
なんだか淋しかったのは





ずっと一緒にいることが当たり前だったトリが
離れてしまうと云うことも
あったかもしれないけど



もしかしたら
“そーゆーこと”なのかもしれない




「わわわっ!!
どうしよどうしよ!!
俺ってソッチの趣味があったってこと!?」




…いや。
よお〜く考えてみろ、俺。

思い返してみたら、
色々と“伏線”はあったのかもしれない。


だって優だったら
そりゃ少しは淋しいと思うかもしれないけど
絶対こんな風には思わない。



嬉しいけど悲しい
心にぽっかり穴が空いたような。

まるで幼い嫉妬心や独占欲のような。



(じゃあ俺は無意識に…
トリに“恋”してたってこと!?)


自分の思考がなんだか恥ずかしい
でも、考えてみればそう云うことだ。




俺は無意識に、
トリに恋をしていた。




ただそれが
“幼馴染み”と云う肩書きに隠れてしまって


“幼馴染みだからしょうがない”
“幼馴染みだから…”と。


恋愛対象にしていたのを
“気付かなかった”のではなく

“気付けなかった”だけかもしれない。







「うわあああ…っ!?
やばい、…なんか変な感じっ」




この恋には気付かなかった



その後
ソファーに顔を埋めて赤面してるところを
仕事が終わり
何故か俺ん家に帰ってきた羽鳥に見付かって

「可愛い」とメチャクチャにされたのは
また別の話。


千秋の視点で辿るトリへの想いに、きゅんきゅんしっ放しでした。千秋の「無意識」な好意は、トリにとっては本当に罪な位に可愛いですよね。
トリへの気持ちを、恋愛ではなく幼なじみへのものだと考えていた千秋が、そのことに気付いて赤面してしまう場面が大好きです。後から照れる千秋が可愛い!
茜様、素敵なお話を有り難う御座いました。




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