へっくしゅんと、くしゃみをした俺。やはり俺は、季節の変わり目に弱いらしい。となりには、そんな俺を馬鹿にするように笑う美紀がいる。

「けいちゃん、風邪ひいてるなら近くに来ないでよね」
「うるさい。お前がこっちに来たんだろうが」
ふん、と鼻を鳴らしてみた。
美紀はどうせ、俺のことが大好きで仕方ないんだ。その証拠に、風邪をうつすなと言うわりに、一向に俺のそばを離れようとしない。美紀も素直に俺のことが好きだと言えばいいのに。
ふわり、と俺の首元に何かがかかった。さっきまで美紀の首に巻かれていたマフラーで、まだ温かみが残っている。
「しょうがないから貸してあげる」
微笑む彼女に、ついつい見惚れてしまった俺は、それを隠すようにして、あたりまえだろ、と言って目をそらした。そらした後も、彼女の視線がこちらに向いているような気がして、なんとなく恥ずかしかった。
なんで俺が、こんな女ごときに恥ずかしいと思わなくちゃならないんだ。ずるずると鼻をすする俺。今の俺、相当かっこ悪いんだろうな、とため息を漏らした。
美紀は何を勘違いしたのか、なぐさめるように俺の頭を撫でた。

「そんなに心配しなくても、すぐに治るから」
かっこいいとかかっこ悪いとか、この際どうでもいい。
次の瞬間、俺は彼女を思わず抱きしめていた。わっ、と言って俺の方に倒れこむ美紀が愛しすぎて仕方がない。惚れていたのは、完全に俺のほうだった。


俺様失格/仮初乙女より
お疲れ様でした。おやすみなさい


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