繋いだ手は冷たい


どこか遊びにいこう、とメールで言われてさくの家まで
行くと、さくは玄関先で猫を撫でていた。
「可愛いね、名前は?」
「知らないよ」
さくはしゃがみこんだ太ももの上に猫を乗せて、お前は何ていう名前なの、と笑いかけた。
「さく家の猫じゃないの?」
「うん、家の前に段ボールに入って捨てられてた」
「なに、どうすんの?」
「飼う」
当たり前、と猫を抱いて立ち上がると家の中へ猫を入れた。そして鍵をしめて、行こう、と私に言った。

駅まではさくと自転車二人乗りで、さくが前で私がうしろだった。のろのろ走るから何度もよたって、私はサンダルの底をかなりすった。私がさくの背中にそれを伝えると、さくは新しいの買ってあげる、と笑った。
電車内でおばあちゃんが前に立ったらさくはすぐに席を譲ったし、降りた駅のホームで迷子がいたらすぐに話し掛けて、駅員のところまで連れていった。前から知っていたことだけどさくは優しい。誰にも平等に優しくて、普通の女子が私の立場ならかなり嫉妬するんだろうなあと思った。でも私はさくのそういうところが好きで一緒にいるので、それに関して私は何とも思わなかった。

「ねぇ、さく」
「なに?」
「手繋ぎたい」
「いいよー」
笑いながら私の手を握ったさくの手は冷たかった。


繋いだ手は冷たい/againより
お疲れ様でした。おやすみなさい


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