「俺は思うんだ。エイプリルフールなんて日は生きている人間が勝手に名付けたもので別に今日なにかが起こるわけではない。人間が繰り返される平凡な日常にスパイスを加えようと考え付いたもの。…くだらない。生きる人間が楽しむ行事なのだから私たちには無関係だ。」

伏口はそう言うと鈍い人は嫌がるような音を鳴らして人間の指にかじりつく赤い口。
ちらりと綺麗に揃う歯の隙間から覗く舌は僅かに青く見えた。それは目の前の少年が腹を空かせている証拠だ。腹が空いているなら喋ってないで食事をすればいいのにと思いながらダズは一つ一つ書類を確認していく。

「今日だけじゃない。ハロウィンやクリスマス、ひな祭りなどまだまだ沢山。お盆だってその日になれば死人が帰ってくる、そんなわけないだろうが。他にもみどりの日、文化の日などの不必要な日ばかり作りたがる。多分私が知らないだけで毎日毎日なにか決められた日なのかもしれない。いや、誰も今日が何の日だ明日はなんとかの日だと全て把握してる奴なんていないだろ。いたらそれこそ尊敬するな。」

再度ボリボリと食事を再開する相手を見てはダズはため息を付く。
食事をしながらのお喋りはマナー違反と言いたかったが少年はしっかり口のものを無くしてから話始める。
それでマナーは守られてるのかと聞かれればノーだがこうゆう風に何かをテーマに一人話続ける伏口には何と言おうが止められないとダズは理解していた。

「言いたいことは分かるけどそれをアタシ以外には言わないでよ?みんなそれなりに行事を楽しんでるんだから。」

「あぁ、分かってるよ。だがさっきあむと首無しに私たち本当は人間なのよ、って言われた時はどうしようもなかった。今考えれば少し悪いこと言ったなと思う。」

「…なんて言ったのよ。」

あむ、という単語に反応したダズは書類から目を離して伏口を睨む。
そんな視線は気にしない筈なのにわざとらしく肩を竦めてまぁまぁ、怒るなってと宥めてくる。

「ただ、お前らがもし人間としてその一つしかない大きな瞳と首がないという件についてはどう説明してくれるんだ?と問ってやっただけだ。」

だってそうだろ?と伏口が首を傾げる。これが普通の少年がやったら可愛らしいんだろうと思う。伏口は可愛らしいがダズはあむが絡む時の伏口だけは好きになれなかった。前にそれを伏口に伝えたら「ならあむが絡んでいない時の私は好きなんだ?」とニヤニヤしながら言われたのをダズは忘れない。
「…あまりあの子を傷つけないでちょうだいよ。」

へいへいと返事をしていつの間に空になっていた皿を仕舞う。腹を満たしたせいか舌は赤色に染まっていたのをダズは確認した。

「まぁ、話は戻すけどさ。今日はエイプリルフールだ、俺も人間が名付けた下らない今日に従ってみようと思う。」

ダズは壁に掛けられている時計を確認した。もう今日は4月1日ではなかった。

「ちょっと、伏口。あんた時計を「好きだ。」」

突然告げられた言葉にダズは固まる。

「……は?」

なにを冗談言っているんだと伏口を見るがその顔は真面目でからかいなどは感じなかった。

「なに固まってんだ。寝るにはまだ早いだろ。」

「なに、ふざけてるのよ…。」

ダズ自身馬鹿らしく感じるが動揺で上手く声が発せられず、とりあえず少年に知らせるように時計を指差す。
少年はダズの指先を辿り時計を見ると納得したように頷き、すぐに人の悪い笑みを見せた。

「あぁ、エイプリルフールなんてもんはもう関係ない。私はお前を愛しているんだが、なにか問題があるか?時間以外に。」

そう言ってさっきと同じように首を傾げる少年にダズは素直に可愛いと思った。









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