不春の日記念
「不動さん」
「あ?」
「ここで寝たら風邪引きます」
せっかく気持ちよく寝てたのに急に誰かが俺の肩を揺らし、少しキレ気味の声を出し見上げるとあの鬼道くんの妹だった。
妹ちゃんは最初ビックリしてたけど、すぐに微笑み毛布をかぶせてくれた。
「怒らないでくださいよ!お兄ちゃんがまたどこかで寝てるって聞いたから私が風邪引かないようにと思って持ってきたのに」
「余計なお世話だ、どうせ鬼道ちゃんに言われてきたんだろ」
「いいえ?」
「は?」
「私は別にお兄ちゃんに頼まれたからとかじゃなくて来たくてここに来たんですけど」
「………」
「とにかく!もうすぐご飯なのでそれまで寝ててくださいね、起こしに来ますから」
「へいへいー」
ほんと、不思議な女だなって思った。なんで俺なんかにここまでするきっとあいつの事だから一人一人優しくしてんだろ…
ま、それがあいつのいいところか
「寝るか…」
小さい頃の夢をみた、最近はまったく夢なんて見なかったのに暗い暗い、走っても走っても先が闇だ。人が出てきても俺が手を差し出すと消えていく。俺はまた一人になるのかそう思った瞬間肩を揺さぶられ俺は起きあがる。
すると横にいた音無が心配そうに俺を見る。
「だ、大丈夫ですか?うなされてるみたいでしたが…」
「あぁ、大丈夫だ少し嫌な夢を見ただけだ」
「それならいいんですけど…ご飯で来ましたから行きましょう」
「お、おい」
「今日は嫌いなトマトもありますから絶対残さないでくださいね」
「なんで入れるんだよ!」
「好き嫌いは良くないですから、私が入れておきました」
急に音無は止まり、俺の方に振り向いて悲しそうな表情になり
「不動さんは一人じゃないですから」
「!?」
音無はそう言って戻って行った。
俺は今さっきの言葉に驚いたがもしかしたらうなされていた時になにか聞いてしまったのか?
一人じゃないですから、あいつの表情が忘れられない
あいつ、なんて顔してんだよ…
少しだけ夢を忘れられた気がする
「おい、鬼道くんこれ食べてくれねーか」
「これはトマトではないか」
「あー!!不動さんトマト残したら駄目って言ったじゃないですか」
「春奈?」
「お兄ちゃん!絶対食べないでね、不動さんに食べてもらわないと」
「ちっ」
「春奈ちゃん?」
「え?」
名前を読んで見ると顔真っ赤になり、隣に居た鬼道くんが睨んでくるのがわかった。
「今回は許してくれよ」
そう言って音無の耳元で囁くと音無は顔真っ赤になり持っていたトマトを落としてしまう。
鬼道が不動うう!!と叫ぶまで後10秒。