ミザリーと狂気の人格者

静寂な空間。何か近寄り難い黒い鏡の前に私は立った。
今から会おうとするその者は、私にとっては生みの親。周りの大敵。
どうしてこうも周りが敵視する、邪魔な存在だと認識した人ばかりに惹かれるのか。
自分で自分を笑いながら、その黒い鏡に触れて語りかけた。
「………開けて頂戴。…ミザリー」



いつの間にか禍々しい空気を孕んだ部屋に来た。目の前には、探していた人…ミザリーが待っていた。
「いらっしゃい、梅??」
「お久しぶりだな、ミザリー」
優木によく似た、いや、もうガラクタと化した身体を乗っ取り、悪意等で黒く、紅く色と瞳を染めたその優木…いや、ミザリーは、ニヤリとした笑みを崩さずにこちらを見つめる。その鋭く、視線で人を射抜けるのではないかと思うくらいの目付き。
既視感がある。この感じは、我が主である李亜様が、自身の力を半開してる時と大差ない。
…私は、畏怖するしかなかった。
「なんの御用かしら?」
「…誘い込んだのは、貴方様な癖に。」
「あら、自らの足できたのは、貴方なのにね」
やりづらい。非常に。
頭の良し悪しなんかじゃなく、これは自身の感情を如何に彼女の前で隠すかによって、先手が決まってしまう。最も、彼女の前で負の感情を出さずにいる事がほぼ無理な話だと思うが。
「何、問いたいだけよ貴方に。」
そう言うと少し間を開け、静かな声で問いかけた。
「何を踏みとどまっているの」
ミザリーは真っ黒な魔力を身にまとう。黙ることを許さない支配力を含んだその力に、私は、動じないふりをする。
「…主、は、我が主は。アナタ様ではなく、李亜様。李亜様は、梅も、紫苑も、両方必要としています。故に、私は紫苑を殺すことはできません。」
彼女の問は、何故蝕まないのか。その一択だったのだ。
闇の部分こそが私で、その光、考える思考に特化した部分は紫苑。
2人で一つの梅であり紫苑。
それを捨てられない私の囁かな感情があった。それは、自分を殺すのと変わりのない行為だから。
ミザリーにとっては嘲笑うしかないその人の、感情のかばい愛に冷ややかな目を向けた。
「……っふふ、あはははははははははははっ!!!!!!!!」
侮蔑を孕んだ高笑いがこだまする。
身体があの、心優しい優木だからかその高笑いは余計に異常だと感じてしまう。
ミザリーに支配された空間でただ刀を握ることすら出来ない中で、今度はまた静かな時間が流れていく。
「まぁいいわ。できないと言うなら、

李亜、瑠雄を喰らっても問題は無いわね。」
「…な、!?」
絶望的な脅しだった。
二人を喰らうというのだ。主である、兄弟を。
…そんなことしたら、間違いなくミザリーの力は強大化する。
私は、苦渋の決断を今、ここで強いられていた。 僕という人格を殺すか、それとも主を捨てるか………。
「……わかり、ました。…仰せの、ままに……」
きっと、主を取るしか道がない。
有り得ないほど無力な自分に、使えない人格に、苛立ちが募った。




back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -