赤の殺人鬼

ああ、鉄臭い。

でも、それが心地いい。



「アルタートゥム区で、また例の惨殺だってさ」
「いやねぇ。悪魔の子でしょう?」
「早く死ねばいいのに」
聞こえてくるその声は軽蔑と嘲笑。
苛立ちしかなかった。
何故こうも人間は、定まらない普通を基準として見下すのだろうか。
そんな俺も、人間な訳だが。

「……すげぇ、ザワザワする。」
鼓動がうるさい。過呼吸??息が途切れ途切れだ。
いや、違う、これは。
ふと周りを見ると、俺を殺そうとしてるのか、売り払おうとする輩なのか、
沢山の人。
…興奮していた。殺意。憎悪。俺に向けていることがわかる。
思わず口元がにやけてしまう。自分でも、気持ちが悪い程に。
「…全員、俺のエサ??」「どんな死にざまをしてくれるんだ?」
「ぶっトばせてやるよ」

自身から湧き上がる狂気は、俺の理性を飛ばすには充分すぎる物だった。

本能こそが至高。理性など邪魔でしかない。

紅、あか、アカ、アカが舞う!その肢体からあかが吹き出る。
そのあかに穢されることを気にせずに浴びる事が堪らなく気持ちがいい。
「化物…!!!悪魔!!!」
聞こえてくるその声は恐怖を孕んでいる。
そんな事も構わず、ただ短剣を振るっては虐殺を楽しんだ。
「地に堕ちてしまえ」


周りが静まる。漂うのは鉄の臭い。
地面には赤黒い血が染み込んでいて、其処には無残な人だった者が積み上げられている。
そしてその死体の上に座っているのは。

シルエットでも分かる程赤い目がギラついて、翼は大きく広げられていた。
「化物も悪魔も厭わないな」
愛おしそうに血が滲みた短剣に口づけを落とした。




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