chapter.2-25


「僕らの素性がわかったところでさあ商談だ!」

「こっちからの情報はこのサンスディアから出る方法を」

「シェスカさんは“しつこいストーカー”のことを僕らに教える」

「これでいいか?」

 ブランとノアは次々と交互に口を開く。相変わらず息ぴったりだ。もう何度も見ているが、そのコンビーネーションには毎回感心させられる。

「ええ。それでいいわ。じゃあまず、この街から出る方法だけど…」

 さっそく本題に入ろうとするシェスカだったが、ブランに「ちょっと待った」と顔の前に手のひらを向けられて遮られてしまった。

「俺らの情報はそれなりの価値があるもんなんでな。料金は先払いだ」

「持ち逃げされちゃ困るしね」

 そう話す二人に、彼女は聞こえないくらい小さく舌打ちした。持ち逃げするつもりだったのかよ。普段はわりと良識的なくせに、こういうことは案外平気でやってのけるようだ。初めて会ったときも食い逃げ(未遂だったが)しようとしたし。

「…わかったわ。ただ、どこから話したらいいかわからないから、質問か何かくれるかしら?」

「「よしきた!」」

 嬉しそうにポケットから取り出したメモ帳をばらばらとめくり出した双子を眺めつつ、ヴィルはこそっとシェスカに話しかけた。

「いいのか? 話したくなかったんだろ?」

 そういえば似たようなことを地下通路で聞いた気がする。なんていうんだっけ、そうデジャヴだ。

「あの時は下手に巻き込みたくなかっただけよ。今は早くここから出ることの方が大事。違う?」

「…辛くないか?」

 淡々とこれまでの経緯を話していた時の彼女を思い出す。何の感情も込もっていなかったあの声は、きっと演技だったんだろうな、と今ならなんとなくわかる。

「…ありがと。慣れてるから」

 シェスカはそう困ったように微笑むと、またいつものきりっとした顔で双子達の方へ目を向けた。

「じゃあ何個か質問させてもらうぞ」

 適当にちぎったメモを片手に、ブランがそう口を開いた。

「その“ストーカー”に会ったのはいつ頃? あと、アバウトでいいからどの辺だった?」

「半年くらい前ね。場所は…リエンの南の小さな村よ。もう焼け跡しかないけどね」

 シェスカの話す内容を書くのはノワールの担当らしい。相槌を打ちながら、すらすらとメモにペンを走らせている。



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