「ところで、アメリ側はなんで封鎖されてるんだ?」
ずっと気になっていた疑問をぶつけてみる。シェスカは緩やかに首を横に振ると、
「それが、封鎖してるジブリールの人もよくわかってないそうよ。何でも、ものすごく上の方からの命令らしいわ」
スイル側は“奴ら”がいる上に封鎖、アメリ側も封鎖。これでは八方塞がりだ。地下通路もパルウァエへの出口はヘカテによって封じられている。
ふと、ヴィルの頭にブランとノワールの言葉が蘇った。
『ああ、僕らはギルヘンっていう遺跡から降りてきたんだよ』
『パルウァエからだと…そうだな、ずっと北西に位置してるな』
「あの地下通路からなら出られるかも…」
パルウァエには出られなくても、少なくともそれ以外の場所には出られる。そう口を開こうとしたが、シェスカの「ダメね」という言葉で遮られてしまった。
「“奴ら”はきっと私を血眼になって探してるはずだわ。きっとこのあたりの遺跡は確実に押さえにくるわね。仮に地下通路がリエンやライオスまで続いてても、そこまで行くのには準備が足りないわ」
あの地下通路がアメリにも通じていればよかったのだが、あそこは最終的に全ての道が一本にまとめられ、ヴィル達が登ってきた階段で完全に途切れていたのだ。
「捕まるわけにはいかないのよ…!せめて本当のことを知るまでは…」
シェスカはやりきれない表情でぐっと唇を噛み締めた。力を入れすぎているのか、少しだけ血がにじんでいる。
「シェスカ、噛むなよ。血が出てる」
「あ、そうね…」
シェスカがスカートのポケットからハンカチを取り出したその時、ひらり、と何かが舞い落ちた。小さい紙切れだ。
「これ、あの時ノアに渡された地図だよな」
「ええ。どこを示してるのかはわからないけど…」
二人してがたがたの線で書かれた地図とにらめっこするも、どこの地図なのか、またどこを指しているのかもわからない。完全に途方に暮れかけたその時、
「わあっ!?」
ずざあああああっと派手な音を立てて、目の前で女性がすっ転んでいた。その人物が抱えていたであろう紙袋から、どんどん中身が転がってあたりに散らばっていく。
「あ〜、待って〜!…へぶっ」
起き上がってそれらを拾おうとするも、今度はスカートの端を踏んづけてそのまま地面にダイブしてしまう。あまりに華麗な転びっぷりに、ヴィルやシェスカを含む近くにいた人々は唖然とするしかなかった。
chapter.2-21
world/character/intermission