夢を見ていた。
真っ白な景色。狭い路地裏。足早に通り過ぎる人々。
誰もこちらに目を向ける者はいない。オレはそれをただぼんやりと眺める。
…ああ、さむいなぁ。かじかんだ指先をあたためようと息を吐く。ほんの一瞬だけあたたかさを感じたが、すぐにそれは真っ白に溶けて消えていく。
何故、こんなにもここは生きづらいのだろうか。何故、彼らとオレは、こんなにも違うのだろうか。
ただそれだけが、ずっとオレの頭をぐるぐると巡っていた。
「…ル…………ィル……ヴィル!!」
ハッと顔を上げると、シェスカが心配そうな顔でこちらをじいっと見つめていた。
ああ、そういえば今日の予定について話してたんだっけ。まだ覚醒していない頭をぶんぶんと振って眠気を飛ばす。久しぶりのベッドが心地よすぎて、まだ寝足りないが、急がなければいけないわけだし、そういうわけにもいかない。
眠気覚ましにと取ってきたコーヒーを口に運ぶ。
周りを見れば、自分たちと同じように朝食を食べにやってきた客達で賑わっている。その様子がブラウニー亭の光景と被ってしまい、少しちくり、と胸が痛んだ。
「大丈夫? 寝不足?」
「なんでもないよ。で、情報収集だっけ」
「ええ」
ヴィルが起きる頃には身支度を完璧に済ませていたシェスカは、先に食堂に来て、昨夜と同じ席に陣取って優雅に紅茶を啜っていた。現在は朝食のメニューについていたサラダをもくもくと食べている。
「とりあえず一度アメリ側の門とスイル側の門の様子を見に行きましょ。ひょっとしたら封鎖が解けてるかもしれないしね」
「じゃあ、手分けして行くか? その方が手っ取り早そうだし」
「そうね。私はアメリ側を見に行くから、ヴィルはスイル側をお願い。確かこの街の中心に噴水のある広場があるのよね? そこで合流しましょ」
例え情報が得られずとも、ひとまずお昼頃に一旦噴水広場に戻ってくること。とシェスカに念を押されつつ、ヴィルは残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
chapter.2-17
world/character/intermission