chapter.2-07


「そんなことより、あなたたち何者?何でこんなとこにいるの?」

 シェスカはヴィルの後ろに引っ込んだままそう問いかけた。

「それはこっちのセリフかなー。君たちこそ何でこんなとこにいるのさ?トレジャーハンターには見えないけど」

 黒髪の少年はにこにこしながら問い返す。

「オレはヴィル。で、こっちはシェスカ。オレ達、パルウァエからアメリに向かうとこなんだ」

 黒髪の方の質問に応えると、今度は白髪の方が口を開く。

「何でこの道を?こんな地下通路通るより、地上から行った方が遥かに安全だと思うけど?」

「こっちにも事情があるのよ。そういうあなたたちは?こっちも名乗ったんだからあなたたちも名乗りなさいよ」

「ああ、ごめんね。僕はノワール・エヴァンスっていうんだ。ノアって呼んでくれたら嬉しいな。そこの白いのは僕の双子の兄さんだよ」

 と、黒髪の少年が微笑む。

「俺はブラン・エヴァンス。で、そこで伸びてるのが、ジェイクィズ・バートガル。通称ゴキブリ」

「違いますー!ジェイクですー!みんな大好きジェイクおにーさんですー!」

「で、僕らがここを通ってる理由なんだけど…」

「おい無視すんなって傷つくよー!おにーさんメンタル弱いよー!スライム並みに弱いよー!」

 白髪の少年もといブランの紹介に、ジェイクィズは勢いよく起き上がって抗議するが、双子は完全無視だ。それに倣い、ヴィルもとりあえず彼をスルーすることにする。

「サンスディアに急ぎの届け物あってな。ここは近道なんだ」

「さんすでぃあ?」

 シェスカの頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。ヴィルは地図を取り出して、シェスカにサンスディアの場所を示してみせた。

「このメエリタ大陸からアメリに繋がる橋があるんだけど、その橋の上にある街だよ。交易が盛んで、結構賑わってるんだぜ」

「へぇ…。じゃあここってそのサンスディアに繋がってるってわけね」
 
「「そういうこと!」」

 と、双子は声を揃えた。

「でもさぁ、聞いてよ!僕らか弱い一般人じゃ魔物だらけの通路危なくて通れないでしょー?」

「しゃーなしにあのゴキブリ雇ったら、美人なお姉さんにホイホイついてくわ、勝手にうろちょろするわで俺らはここで一週間くらい道に迷うしさぁ」

「「ほんっとーに酷いよねー!!」」

 双子はくるくると大仰な仕草をしながら、まぶしい笑顔でにこやかに話しているが、その言葉の節々にはこれでもかと鋭く尖らせた棘が大量に含まれていた。

「うわぁい、おにーさんのメンタルはもうズッタボロだよ…」

「ど、どんまい」

「ヤローからの慰めとか死んでもいらねェ…」

 ジェイクィズの力の抜けた抗議も、ブランとノワールの前では完全にスルーだ。そろそろかわいそうに見えてくる。


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