chapter.1-32


「なぁ、シェスカ。話してくれないかな、きみのこと」

 こんなことになったのも、元はといえばシェスカと出会ってからだ。彼女はあの変な魔物のことも、フードの二人組のことも知っているようだった。それに、ずっと気になっていたこともある。
 ぴくり、と彼女の肩が揺れた。ゆっくり顔を上げたシェスカの表情はとても悲しげだ。そんな顔を見られたくないのか、彼女はまた俯いてしまう。
 ヴィルは彼女の目線に合わせるように、シェスカの隣へ腰を下ろした。

「…話すわ、全部。ここまで巻き込んじゃったんだもの。あなたには聞く権利があるわ」

 彼女はヴィルに全く口を付けていない水筒を返すと、再び顔を上げた。
 シェスカの瞳には先程までの暗さはなく、ただ真っ直ぐにヴィルを見据えていた。

「半年くらい前かしら。私がお世話になってた村にね、あいつらが来たの」

 シェスカは少し考えてから、そう切り出した。


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