激しい光が収まった。そう感じたヴィルはゆっくりと瞼を開いた。
目が慣れるまでしばらくかかったが、間違いない。ここは…
「遺跡だ…」
森の木々たちに溶け込むように、その遺跡は佇んでいた。
石を削って造られたそれは、雨に濡れて神秘的な輝きを放っており、アーチを作る曲線は、優美ながらもどこかシャープさを感じさせる。
木の多い中に建てられているのにも関わらず、木を切り倒した形跡は全くなく、枝や根をよけて造られていた。それなのにまったく美しさを損なわず、自然と調和している。
その昔、高度な文明を誇っていたエルフ族が建てたとされた遺跡だ。世界に点在していると聞いているが、ヴィルはこのオルエアの遺跡しか見たことがない。
「先生!ヴィル!」
その遺跡の影から、ひょっこりとローランドが顔を出した。胸には大きな袋を抱えている。
「と、それから誰?」
ぽかんとした顔でシェスカを指差した。そのシェスカはというと、ヘカテをじっと睨みつけていた。
「あなた、さっきの奴らと知り合いなんですか?」
シェスカはさらにヘカテに問う。
「それにさっきの魔術。あれ、おかしいじゃない。なんなんですか?」
「質問は一度にして頂戴。それから、あんまり時間ないから手短に言うわね」
まったく状況を理解していないローランドはヴィルに、
「なぁ、これどういうことなの?」
と小声で尋ねた。さて、どう話したものかとヴィルは少し考えた。
「えっと、話せば長くなるんだけど…」
「そこ!喋ってて聞いてなくても二度は言わないわよ!」
ヘカテの怒号に、弟子二人は閉口するほか選択肢はなかったのだった。
chapter.1-21
world/character/intermission