chapter.1-21


激しい光が収まった。そう感じたヴィルはゆっくりと瞼を開いた。
 目が慣れるまでしばらくかかったが、間違いない。ここは…

「遺跡だ…」

 森の木々たちに溶け込むように、その遺跡は佇んでいた。
 石を削って造られたそれは、雨に濡れて神秘的な輝きを放っており、アーチを作る曲線は、優美ながらもどこかシャープさを感じさせる。
 木の多い中に建てられているのにも関わらず、木を切り倒した形跡は全くなく、枝や根をよけて造られていた。それなのにまったく美しさを損なわず、自然と調和している。
 その昔、高度な文明を誇っていたエルフ族が建てたとされた遺跡だ。世界に点在していると聞いているが、ヴィルはこのオルエアの遺跡しか見たことがない。

「先生!ヴィル!」

 その遺跡の影から、ひょっこりとローランドが顔を出した。胸には大きな袋を抱えている。

「と、それから誰?」

 ぽかんとした顔でシェスカを指差した。そのシェスカはというと、ヘカテをじっと睨みつけていた。

「あなた、さっきの奴らと知り合いなんですか?」

 シェスカはさらにヘカテに問う。

「それにさっきの魔術。あれ、おかしいじゃない。なんなんですか?」

「質問は一度にして頂戴。それから、あんまり時間ないから手短に言うわね」

 まったく状況を理解していないローランドはヴィルに、

「なぁ、これどういうことなの?」

 と小声で尋ねた。さて、どう話したものかとヴィルは少し考えた。

「えっと、話せば長くなるんだけど…」

「そこ!喋ってて聞いてなくても二度は言わないわよ!」

 ヘカテの怒号に、弟子二人は閉口するほか選択肢はなかったのだった。




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