chapter.1-19


「何へたりこんでんの。なっさけない」

「師匠、何でここに!?」

 ヘカテはヴィルの問いかけなどさらりと無視して、フードの少女を見た。
 突然の闖入者に少女はにやりと笑みを深めると、斬り結んでいたアシュリーを薙ぎ払う。

「今日は邪魔が多いですね。ジブリールだけでなく、ヘカテ・ミーミル……まさかあなたまでとは」

 少女はゆっくりとヘカテに歩み寄る。アシュリーとレオンも、新たな来訪者が何者かと注目していた。

「と、いうことは、この『器』は本物のようですね」

「あら、何のこと?私は馬鹿弟子が死にそうになってるのを助けただけよ?」

 やれやれとヘカテは肩をすくめた。彼女は未だ地面にへたりこんでいるヴィルの腕を掴んで立たせると、ひらひらと少女に手を振った。

「じゃ、そういうことだから行くわよ、ヴィル。と、ついでにそこの娘も」

「え?え?」

 あまりの唐突展開にヴィルの頭上にはクエスチョンマークが乱舞している。それはシェスカも同じようだ。しかし、ヘカテは全く説明しようとせず、すたすたと森の奥のほうへ歩いている。
 ヘカテは首だけ少女に向けて、

「あーそうそう。もうすぐジブリールんとこの隊長が来るらしいから、あんたたち退いたら?」

「っ!止めなさいヴァラキア!!」

 少女は声を荒らげた。呆気にとられていたらしいフードの片割れの男は、その声で我に返ったようだ。大鎌を構え直すと、ヘカテらに向かって一気に斬り掛かる。


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