「早くッ!」
アシュリーはヴィル達に短くそう言うと、フードの少女に向かって走り出す。彼女は八の字を描くようにすばやく槍を振り回しながら、少女を牽制した。しかし、少女のほうが一枚上手のようだ。あっさり躱すと、大剣によるパワーで押し切ってくる。
それでもアシュリーは何度も少女に向かっていった。体制を立て直したレオンもそれに加わる。
シェスカはぐっと唇を強く噛み締め、ヴィルに向き直った。
「ヴィル、行くわよ」
「でも、あの人達…!」
ガッ、と強くシェスカに肩を掴まれた。俯いているので表情はわからない。けれど、ヴィルの肩を掴むその手は震えていた。
「…わかった。行こう」
ヴィルはその震える手を握ると、しっかりと頷いた。
「おっと、そーゆーわけにはいかないなァ」
背後から声が聞こえる。今度は若い男だ。ヴィルはとっさに振り返った。あのフードの少女と同じデザインのものを羽織った、長身の男だ。
男はにやりと笑うと、一言。
「バイバイ」
首元に異様な冷気を感じてそちらに目を向けた。少女が持っていた、あの禍々しい大剣によく似たそれが、鎌だとわかるまで数瞬。
「ヴィ…ッ!!」
シェスカの息を飲む声が聞こえる。
ヴィルの首に刃が食い込もうとした。
その時。
「邪魔よ雑魚!」
ヴィルの視界に入ったのは、サンダル履きの足が、男を思いっきり蹴っ飛ばす瞬間だった。
ぺたんと腰を抜かしたヴィルはその姿を確認すると、思わず目を見開いた。
「し、師匠!?」
その足の持ち主は他でもない、ヴィルの育ての親であり、錬金術の師――ヘカテ・ミーミルのものだった。
chapter.1-18
world/character/intermission