chapter.1-08


『堅牢なる光の盾!! 我らを守護せよ!!』

バキィィィィィィィィィィィン!!

 シェスカの声と何かが弾かれるような音が同時に聞こえた。
 おそるおそる目を開けると、宙に剣を突き出している彼女の姿があった。そして、その剣の先には、何かに吹っ飛ばされたようにひっくり返っているデカガエル。

「え、え?」

 いまいち状況が掴めないでいると、

「ヴィル! 時間稼いで! あいつまだ動くわよッ!!」

「あ、ああ!」

 シェスカに言われるまま、腰のホルダーから剣を引き抜く。
そうしている間にデカガエルは体勢を立て直したようで、長くて先の丸い舌でべろりと舐めずっている。

「出来る限り私に近付かせないで! 合図したらそいつから離れて! いい!?」

「わ、わかったよ」

 シェスカの言う通りに、ヴィルはデカガエルに向かって走り出した。
できるだけ低く姿勢を保ちつつ、そいつの足を狙う。
が、あのカエルはそんなことお見通しだと言わんばかりに、その長い舌で彼を捕まえようとするため、なかなか近づけない。

――ちょっ…! こいつ早い…!? もう薬が切れたのか!?

 舌が彼の左をかすめた。粘度の高い唾液が飛び散る。
 ヴィルの顔にびしゃりと唾液がついた。独特の水臭さが鼻を突く。
そのことに一瞬気を取られていると、

「っ、がッ!?」

 デカガエルの手がヴィルを地面に思い切り叩き付けたのだ。
その衝撃で、右手から剣を放してしまう。
しまった……! そいつの舌を躱すことに集中しすぎて、手の存在を忘れきっていた。
 デカガエルの湿った皮膚がじんわりと、ヴィルの服を濡らしていく。
何とも言えない不快感から抜け出そうと、彼は身をよじった。しかし、思いのほか力が強い……!


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