chapter.1-07


「はぁ……、ちょっと、休憩しようぜ」

 森に入ってしばらく。ヴィルたちは見通しのいい広い場所を見つけたので、そこで休むことにした。
 かなり大きな(少なくともヴィルの身長の倍くらいあった)カエル型の魔物が襲ってきて、ようやくそいつを撒いたところだった。
 シェスカのほうを見やると、彼女も疲れているようだ。ぺたんと地面に座り込んでいる。

「……なぁ、きみ。……なんで剣、使え、ないの……?」

 乱れた息を整えながら言う。
 あのデカガエルは別に倒せない程強いわけではない。このあたりの他の魔物に比べると、図体がでかいだけでむしろ弱い分類だ。
逃げてきたのはヴィルの実力云々ではなく、彼女のそれであった。

「……なによ、悪い……?」

「そんな剣士みたいな格好してるから、てっきり使えるもんだと……」

「誰も、剣士だなんて言ってないじゃない……」

「そういうの、先に、言ってくれよ……」

 デカガエルに遭遇したときのシェスカといったら、それはそれはひどいものだった。
狭い場所でぶんぶんとでたらめに剣を振り回すわ、振り回した剣が木に当たり枝が折れ、その折れた枝がヴィルの顔に向かって飛んでくるわ。
 とりあえず、彼が持っていた自作の痺れ薬をカエルにかけて、なんとか難を脱したのだ。

「やっぱついてきて正解だったな……」

 こんなシェスカが一人で森に入っていたらと思うと、ぞっとする。

「ちょっ、何その顔!? 足手まといだって言いたいわけ!?」

「いや、別に」

「確かに剣とか使えないけどっ、それは専門外なだけなんだから!」

「じゃあ何ならできるんだよ?」

 その時、

 ばきばきばき!!

と、近くで何かが折れる大きな音と共に、まだ昼過ぎだというのに、急に辺りが暗くなった。

「なんだ!?」

「何してるの! 上よ!」

 シェスカに怒鳴られて見上げると、ヴィルたちの頭上に白い何かが落ちてくるのが見えた。
 それがさっきのデカガエルの腹だと理解するまで数瞬。

――――潰される!!

 そう直感したヴィルは次にくるであろう衝撃に備えてぎゅっと目を閉じた。


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