chapter.5-7


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「おーい、シェスカぁー! サキー! いないのかー!?」

「ロルダ〜〜〜〜ン! パウラぁ〜〜〜〜〜〜!! イニゴぉ〜〜〜〜〜〜!! 首ぉぉぉ領〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 ヴィルとイリス、ふたりして口元に手を当てて、探し人の名前を呼ぶ。返ってくる言葉はない。ふたりは顔を見合わせるとやっぱりだめかと肩を竦めた。

「なんか、本当に近くにいるのか不安になってきたなぁ」

「いや、もうほんまにな」

 かれこれ一時間以上はこうして浜辺を歩き回っているものの、シェスカたちやイリスの仲間はおろか、人の姿のようなものは自分たちのもの以外まったく見当たらなかった。

「ここら一帯は探しきったよなぁ……」

「まだ探してないのは、この森の中くらい、だな」

 そう言って、目の前に立ち塞がる木々を眺める。オルエアの森とは違って、何だか木々がうねうねとしていて、まるで今にも動き出しそうだ。あちこちからい蔓が垂れ下がり、大口を開けて待っている怪物の口を思わせる。奥は薄暗く、鬱蒼としていて、とても気持ちのよい森林浴ができるとは思えないような場所だ。

「なあヴィル、じゃんけんせえへん? どっちが先に入るか」

「ええー、やだよそれ!」

「がんばってぇなぁ! ほら、年下の女の子に先陣切られるんは、男としてのプライドが傷付くやん? なっ!」

 オレだってこういうトコ入るの怖いんだけど!? と抗議しても、イリスは有無を言わさずぐいぐい背中を押してくる。つい先日トレントに腹を貫かれたあの一件からそんなに日にちも経っていないというのに。すっかりきれいさっぱり塞がった傷が痛みそうだ。というか、じゃんけんはどうした。じゃんけんは。

「細かいこと気にしすぎるんは男でも女でも嫌われるで?」

「いやいや、それ今関係ない。絶対」

「ちぇー。しゃーないなぁ、あたしが先陣切ったるやん」

 イリスはやれやれと言いたげに歩き出した。特に怖がっている様子はなく、むしろわくわくしているような顔である。なら最初からそうしてくれ、というのはナシだろうか。ナシだろうな。多分肝試しみたいな感覚なんだろう。

「右よし、左よし、前方よし! 変なモンは今んとこなさそうやね」

 森の入り口に顔だけ突っ込んで、そう指差し確認するとイリスは大丈夫、と手招きする。ヴィルもまた、彼女と同じように周辺を確認してみた。中に入ってみると、外から見る印象とは少し違い、先程感じたような不気味さはなくなっている。

「確かに、大丈夫そう」

 そう頷くと、イリスはせやろ! と明るい笑顔を見せた。それを見ていると、ちょっとしたことくらいは気にならなくなりそうな気持ちになる。イリスと出会ったのはラッキーだったかもしれない。きっと、この状況に一人だと気落ちしていたに違いない。自分も人よりは前向きなほうだと思ってはいたが、こうして自分以上に前向きな彼女を見ると、なんとかなるような気がしてくるのだから不思議だ。

「ほんならレッツ探険やね! 行こ!」

「目的、ちゃんと忘れてないよな」

「当然! 早いとこみんな見つけたらんとなぁ〜どこで迷子になっとんやろか?」

「あっ、ちょっ、あんまり先々進むなよ!!」

 一応こちらの方が年長者なのだから、せめて無茶しないように注意しておこう。今にも鼻歌を歌い出しそうなイリスを追いかけながら、ヴィルはそう小さく頷いた。


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