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ルシフェルの部屋を出た後、ひとまず病室に戻ろう。というサキの提案を素直に聞き入れ、ヴィルとシェスカ、それからジェイクィズは、彼の後ろへ続くようにぞろぞろとジブリールの中を歩いていた。
「めずらしーな。ベルちゃんがついてこないなんてよ。遂に愛想でも尽かされたのか?」
「知らん」
ジェイクィズの言うとおり、あれだけサキがサキがと言っていたベルシエル……もといセレーネの姿は見えない。ルシフェルに用があったのか、はたまたぼーっとしていたのか。ヴィルたちが部屋を出るときに彼女はついてきていなかったのである。
「そういえばあの子、ルシフェルさんのこと兄様って言ってたけど、兄妹なの?」
思い出したようにシェスカはサキへと問いかけた。
「そうらしい」
「確かによく似てたよなぁ」
そう言いながら、ヴィルは彼ら兄妹の姿を思い浮かべていた。雰囲気の違いはあれど、女版ルシフェルと言われれば納得できるようなくらい似ていた気がする。
「まあ? でも局長よりベルちゃんのが数百倍かわいいけどネ。いや、比べちゃベルちゃんに失礼だな、うん」
「あんたほんと男には厳しいわよね……」
「シェスカちゃん妬いた? やーんもうシェスカちゃんも比べらんねぇくらいかわいいよ!」
「どういう脈絡なのよ!?」
相変わらずのジェイクィズとシェスカのやり取りを苦笑しながら眺める。
なんだかホッとするなぁ。と、ヴィルはぼんやり思っていた。この間まで(ヴィルにとってはついさっきのように感じるが)、魔物やら何やらと戦っていたとは思えない、平穏。それを噛み締めながら、サキの後ろについていく。
「隊長〜〜!」
その声に我に帰ると、いつの間にかみんなと合流した庭園にまで戻ってきていた。詰所へと続く扉の前で、見覚えのある青年が手を振っている。
「レオンハルトか。どうした?」
サキにレオンハルトと呼ばれた、淡い金髪に気弱そうな青い瞳をした青年は、自分と同じ病院服に身を包んでおり、袖口から白い包帯やらガーゼやらが覗いていた。
しばらく記憶を辿ると、浮かぶオリーブ色の軍服。ヴィルはそこでようやく、彼が以前オルエアで会ったジブリール隊員だと気付いた。
chapter.4-17
world/character/intermission