chapter.4-5


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「あっ、ヤバい迷ったかも」

 辺りを見渡して、ヴィルは途方にくれていた。外の空気を吸いに適当にうろついていたら、いつのまにか変な場所に出てしまったらしい。
 建物の境らしいこの場所は、全く人の気配がない。等間隔に並んだアーチ状の柱がいくつも並び、それに囲われるようにたくさんの花たちが咲き乱れている。やけに広いが、中庭のようなもののようだ。
 建物内には慌ただしく駆け回るジブリールの人たちがいたから、おそらくここはジブリールの中なのだろうと結論付けたものの、ジブリールになど入ったことがないヴィルにとっては未知の場所である。

「うーん……オレ、どっちから来たっけ……?」

 似たような風景が広がっているせいで、自分がどこの通路からここに来たのか全くわからない。

「そこの君。迷子かい? ここは関係者以外は立ち入り禁止だよ」

 背後から声を掛けられ、思わず肩がびくりと跳ねる。

「すいません! オレ入っちゃいけないとこって知らなくて……」

 謝罪しながら振り返る。そこには背筋をぴん、と伸ばして毅然と立っている軍人がいた。
 身長は自分とそう変わらないくらいだろうか。しかし、その立ち居振る舞いのせいか、かなり長身に見えた。
 オレンジに近い長い赤毛を高い位置で一つにまとめ、耳には金色のピアスがキラリと揺れてその存在を主張していた。身に纏うブルーグレーを基調とした軍服は、紫の太いラインと、細かな金の刺繍が施されており、胸や襟には数々の勲章やメダルが輝いている。一目で、かなり位の高い人間なのは一目瞭然だった。圧倒的な威圧感のようなものを、ひしひしと感じる。

「仕方ないさ。ここは似たような建物が多くて迷いやすいから」

 軍人はそう青い瞳を細めた。

「病院服を着ている……と、いうことは、君は第二分隊の患者かな。病棟まで案内しよう」

「ありがとうございます。えっと……」

「私の名はオグマだ。さぁ、行こうか少年」

 オグマは言い終わらない内にヴィルに背を向けて歩き出す。置いていかれるとまた迷子になってしまう、と彼の背中を追うことにした。


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