chapter.3-32


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「で、この子どうしようか?」

 気を失っているリーナを抱え起こしながら、ヴィルはアシュリーに尋ねた。思い切り殴ったので心配だったのが、目立ったケガがなくてホッと胸を撫で下ろした。

「君、不用心がすぎるわ。気絶したふりしてる可能性だってあるんだから」

 離れろ、と仕草で言われ、そっと彼女を地面に横たえてアシュリーの方へと向かう。

「手当てくらいしてもいいじゃん。あんなに小さいのに……」

「呆れた。君はさっきまでこの少女に殺されそうだったのよ?」

「それは、そうだけどさ……」

 ばつが悪くなってヴィルはアシュリーから目を逸らした。ついでにとぐるりと周りを見渡してみる。動きを止めた魔物達は、ぱっと見ただの木で、まるで林の中にいるような感覚だ。

「こいつら、また動かないよな……?」

「さあ、どうかしらね。変な気配は今のところないけれど」

「そうだ、えっとセレーネだっけ? 大丈夫かなぁ」

「大丈夫よ、多分。ほら」

 そうアシュリーが指差した先には、アリスを脇に抱えているサキ・スタイナーと、それにひょこひょことついていくセレーネの姿があった。

「あれっ? サキ、スタイナー? 今度こそ本物?」

 ヴィルはごしごしと目をこすってみる。

「本物みたいね。セレーネが従ってるし」

 アシュリーはほんの少しだけ警戒を解くと、小さく敬礼した。
 それに応えることはせず、無言のままこちらに合流したサキはどさ、と少々雑にアリスを降ろす。(むしろ落としているように見えたが)

「怪我はないな」

「ええ。自分よりそっちの少年の方が」

 ちらり、とサキがヴィルを見る。何とも言えない威圧感を感じて、少し居心地が悪い。

「えっと……、そいつ、シェスカ……じゃないな、アシュリーさんを連れてこうとしてたみたいだけど」

「こいつらの狙いはシェスカ・イーリアスだ。何故、彼女を狙っているのかまでは知らないがな」

――奴らだ。ヴィルはそう直感した。フードマント以外にもいたということか。あの時のことを思い出すと、今でも首筋が寒くなるようなぞわりとした悪寒が走る。
 ぶんぶんと頭を振ってそれを振り払って、サキに尋ねた。

「なあ、シェスカは無事なのか? あんたらのとこにいたんだろ?」

「……そういえば遅いな」

 ヴィルの問いに答えず、サキはぐるりと周りを見渡した。それにつられてヴィルも視線を動かす。


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