「どうした、レオンハルト」
『隊長ぉ〜! 大変ですっ! またアシュリーさんが無茶を! しかもセレーネさんまでいるし、なんか見たことあるような少年までいるんですけど!!』
おどおどした声が部屋中に響く。思った以上の音量だったらしく、サキは思わず思い切り眉間にシワを寄せた。
「そのまま待機しておけ。まずいと思ったらすぐに連絡しろ」
了解です〜!早く来てくださいよぉ!と、いう情けないセリフとともに、プツ、と声が止んだ。
「通信、入ったな」
「さっそく想定外起こってんじゃないの!!」
「あんたとジェイクィズはここで待っていろ。余計なことをされても困る」
ガラリ、と窓を開け、窓枠に足をかけながらサキは私とジェイクィズを指差して言った。
「えっ、魔物退治は!?」
「しなくてよし」
「はいよ〜!余計なコトいっぱいしとくから早く消えろよ」
「あんたは何する気よ!?」
このままジェイクィズと一緒に残されたら、このセクハラ魔に何されるかわからない。それは嫌だ。
「そもそもは私のせいなわけだから、私もあなたに着いてくわよ。大きな立ち回りとかできないけど、魔術なら任せてよね」
そう強引に着いて行こうとすると、サキは無言でこちらを見つめてくる。ものすごく嫌そうだ。無表情のくせにオーラがそう言っている。
「なっ、なによ! 足手まといって言いたいわけ!?」
「よくわかったな」
「…あんたほんとにムカつく奴よね!」
「それはどうも。ジェイクィズ」
「はいは〜い」
よっこいせ、とジェイクィズの掛け声と共にふわりと浮遊感。
「これって役得かねェ。あ、シェスカちゃんもうちょい食った方がよくない?」
膝の裏に腕を回され担ぎ上げられる。いわゆるお姫様だっこというやつだ。
「ちょっ…!? 下ろして! 自分で走る!」
「ジェイクィズのが速い」
しれっとそんなことのたまいやがる。
「そんじゃ、さっくり片してゆっくり休むとしようかねェ」
「その前に報告書書いてけよ」
そう言うと、サキは窓枠に掛けていた足を強く蹴り、そのまま外へ。当然それに続くようにジェイクィズも私を抱えたまま、そこに足を掛ける。
「ねぇ、やっぱりここから降りるのよね?」
「階段より速いしネ!」
「でもね、ここ…」
「そんじゃレッツゴー!」
「三階でしょうがぁぁぁぁぁぁ!!」
ジブリールの連中の常識はよくわからない。私の叫びは彼らに華麗にスルーされてしまったのだった。
chapter.3-25
world/character/intermission