chapter.3-25


「どうした、レオンハルト」

『隊長ぉ〜! 大変ですっ! またアシュリーさんが無茶を! しかもセレーネさんまでいるし、なんか見たことあるような少年までいるんですけど!!』

 おどおどした声が部屋中に響く。思った以上の音量だったらしく、サキは思わず思い切り眉間にシワを寄せた。

「そのまま待機しておけ。まずいと思ったらすぐに連絡しろ」

 了解です〜!早く来てくださいよぉ!と、いう情けないセリフとともに、プツ、と声が止んだ。

「通信、入ったな」

「さっそく想定外起こってんじゃないの!!」

「あんたとジェイクィズはここで待っていろ。余計なことをされても困る」

 ガラリ、と窓を開け、窓枠に足をかけながらサキは私とジェイクィズを指差して言った。

「えっ、魔物退治は!?」

「しなくてよし」

「はいよ〜!余計なコトいっぱいしとくから早く消えろよ」

「あんたは何する気よ!?」

 このままジェイクィズと一緒に残されたら、このセクハラ魔に何されるかわからない。それは嫌だ。

「そもそもは私のせいなわけだから、私もあなたに着いてくわよ。大きな立ち回りとかできないけど、魔術なら任せてよね」

 そう強引に着いて行こうとすると、サキは無言でこちらを見つめてくる。ものすごく嫌そうだ。無表情のくせにオーラがそう言っている。

「なっ、なによ! 足手まといって言いたいわけ!?」

「よくわかったな」

「…あんたほんとにムカつく奴よね!」

「それはどうも。ジェイクィズ」

「はいは〜い」

 よっこいせ、とジェイクィズの掛け声と共にふわりと浮遊感。

「これって役得かねェ。あ、シェスカちゃんもうちょい食った方がよくない?」

 膝の裏に腕を回され担ぎ上げられる。いわゆるお姫様だっこというやつだ。

「ちょっ…!? 下ろして! 自分で走る!」

「ジェイクィズのが速い」

 しれっとそんなことのたまいやがる。

「そんじゃ、さっくり片してゆっくり休むとしようかねェ」

「その前に報告書書いてけよ」

 そう言うと、サキは窓枠に掛けていた足を強く蹴り、そのまま外へ。当然それに続くようにジェイクィズも私を抱えたまま、そこに足を掛ける。

「ねぇ、やっぱりここから降りるのよね?」

「階段より速いしネ!」

「でもね、ここ…」

「そんじゃレッツゴー!」

「三階でしょうがぁぁぁぁぁぁ!!」

 ジブリールの連中の常識はよくわからない。私の叫びは彼らに華麗にスルーされてしまったのだった。

 


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