「な、なんでお前らがここに!?」
「なんでって…情報屋だからなぁ」
「情報屋だもんねぇ」
「答えになってねぇし…」
情報屋コンビはお互いを覗き込みながらそう答えた。相変わらずのそのマイペースっぷりに思わず肩を落とす。
「いやね? 僕らの情報がジブリールに利用されてたっていうのを聞いて、無償でアフターサービスをしようというワケですよ!」
双子の黒いほう−−ノワールがえっへん、と胸を張って見せた。白いほうのブランはというと、適当な椅子にどかりと座って、ふんぞり返りながら片割れの言葉に頷いている。
「本当ならシェスカに言わないと意味ないんだが、生憎ジブリールで見つけられなくってなぁ」
「せっかく服まで調達して、見つかりにくいようにしたのにねぇ」
双子は残念そうに顔を見合わせた。ジブリールの服を着ているのはそういうことか、とヴィルは一人納得していた。
「それで君のとこに来たんだよ。あとで彼女に伝えといてもらえないかい?」
「でも、オレは…」
「「ジブリールは危険だ」」
ヴィルの言葉を遮って、双子はぴしゃりと言い切った。
唐突すぎて、彼らの言葉の意味がわからない。危険?どうして?何が?
「き、危険、って…?」
「シェスカさんを追ってる奴がいるよ」
「ジブリールの中に入り込んでる。それもかなり巧妙に」
脳裏にパルウァエにやって来たあのフード付きマントの二人組が蘇る。禍々しい形の武器を携えた、あの二人が。
ぞわりとした感覚が背中を這い回る。シェスカはこのことを知らない、知らせないと、知らせないと。
「彼女がジブリールの手の中にあると知ったら、恐らく」
その時、ドォォォォン!!と低い轟音が鳴り響いた。それと同時にやってくる地鳴り。部屋中がギシギシと嫌な音を立てた。
「な、なんだ!?」
慌てて窓の外を見てみると、街の人々がみんな上を見上げていた。彼らが指差す方を見上げてみる。
すると、上層の方で土煙が上がっていた。
「もう仕掛けてきたか!」
ヴィルの横から身を乗り出して外を見たブランが、そう吐き捨てた。
「な、なあ、あそこって…第三区のほうだよな?」
おそるおそる尋ねてみる。遅れて窓の外を確認したノワールが、それにこくん、と頷くと、いつになく真剣な面持ちで答えた。
「あそこは、ジブリール本部だよ」
ヴィルは弾けるようにベッドから降りると、近くに立て掛けてあった剣をひったくって腰に差した。少し乱暴に差したせいでグラグラするけれど、時間がないのだから仕方ない。
「あそこまで行くのにどれくらいかかるか!?」
「空中滑車さえ使えば結構早いよ!でも駅は…」
「サンキュー!!」
ノワールにお礼を言うと、ヴィルはそのまま飛び出して行った。
「…今の騒ぎで混んでるから無理じゃないかなって言おうとしたのに」
「今のタイミングでややこしいこと言ってやるなよ」
残された双子は揃って深いため息を吐いた。
chapter.3-15
world/character/intermission