chapter.3-15


「な、なんでお前らがここに!?」

「なんでって…情報屋だからなぁ」

「情報屋だもんねぇ」

「答えになってねぇし…」

 情報屋コンビはお互いを覗き込みながらそう答えた。相変わらずのそのマイペースっぷりに思わず肩を落とす。

「いやね? 僕らの情報がジブリールに利用されてたっていうのを聞いて、無償でアフターサービスをしようというワケですよ!」

 双子の黒いほう−−ノワールがえっへん、と胸を張って見せた。白いほうのブランはというと、適当な椅子にどかりと座って、ふんぞり返りながら片割れの言葉に頷いている。

「本当ならシェスカに言わないと意味ないんだが、生憎ジブリールで見つけられなくってなぁ」

「せっかく服まで調達して、見つかりにくいようにしたのにねぇ」

 双子は残念そうに顔を見合わせた。ジブリールの服を着ているのはそういうことか、とヴィルは一人納得していた。

「それで君のとこに来たんだよ。あとで彼女に伝えといてもらえないかい?」

「でも、オレは…」

「「ジブリールは危険だ」」

 ヴィルの言葉を遮って、双子はぴしゃりと言い切った。
 唐突すぎて、彼らの言葉の意味がわからない。危険?どうして?何が?

「き、危険、って…?」

「シェスカさんを追ってる奴がいるよ」

「ジブリールの中に入り込んでる。それもかなり巧妙に」

 脳裏にパルウァエにやって来たあのフード付きマントの二人組が蘇る。禍々しい形の武器を携えた、あの二人が。
 ぞわりとした感覚が背中を這い回る。シェスカはこのことを知らない、知らせないと、知らせないと。

「彼女がジブリールの手の中にあると知ったら、恐らく」

 その時、ドォォォォン!!と低い轟音が鳴り響いた。それと同時にやってくる地鳴り。部屋中がギシギシと嫌な音を立てた。

「な、なんだ!?」

 慌てて窓の外を見てみると、街の人々がみんな上を見上げていた。彼らが指差す方を見上げてみる。
 すると、上層の方で土煙が上がっていた。

「もう仕掛けてきたか!」

 ヴィルの横から身を乗り出して外を見たブランが、そう吐き捨てた。

「な、なあ、あそこって…第三区のほうだよな?」

 おそるおそる尋ねてみる。遅れて窓の外を確認したノワールが、それにこくん、と頷くと、いつになく真剣な面持ちで答えた。

「あそこは、ジブリール本部だよ」

 ヴィルは弾けるようにベッドから降りると、近くに立て掛けてあった剣をひったくって腰に差した。少し乱暴に差したせいでグラグラするけれど、時間がないのだから仕方ない。

「あそこまで行くのにどれくらいかかるか!?」

「空中滑車さえ使えば結構早いよ!でも駅は…」

「サンキュー!!」

 ノワールにお礼を言うと、ヴィルはそのまま飛び出して行った。

「…今の騒ぎで混んでるから無理じゃないかなって言おうとしたのに」

「今のタイミングでややこしいこと言ってやるなよ」

 残された双子は揃って深いため息を吐いた。











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