chapter.3-13


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 身体がだるい。シェスカの意識が覚醒し、一番初めに思ったことがそれだった。
 それもこれも、ジブリールの連中が念を入れて、私を魔術師用の部屋に突っ込んだせいだ。
 あちこちに魔力封じの術式が巡らされており、とにかく身体から何かがエネルギーを抜かれているような感覚に陥る。

「ま、牢屋じゃないだけマシ、か」

 小さなベッドと、テーブルと椅子が一組だけ置かれたこの部屋は、いわゆる反省室のようなものなのだそうだ。ジブリールの隊員には、それなりに魔術師が多いらしく、何かをやらかすとここでしばらく謹慎させられるそうだ。ここに入る前に、昨夜のあいつがそう説明していた。

「目覚めはどうだ」

 この部屋唯一の扉の向こうから、そう声が聞こえてきた。あいつだ。ジブリール第一分隊の、隊長。どうやら一晩中起きて、私が逃げ出さないか見張っていたようだ。随分仕事熱心なものである。

「最悪よ」

 身体を起こして大きく伸びをする。何か変わるかもしれない。そう思ってやってみたが、身体のだるさは変わらない。

「ねぇ、これから私はどうなるの?」

「まずあんたの話と、こちらの調べたものが一致するか、そしてあんたがこの異変の原因なのか、それを徹底的に洗い出すところからだな」

「それってどれくらいかかるの?」

「さぁな。あんたが協力的なら早く終わるぞ。最終的な決定は俺の上が下すから、正確な時間はわからないな」

 そんなことやってる間に、奴らが私を見つけてしまったら…この街はどうなるのだろう。二、三日ほどならまだ大丈夫だろうが、いつ、どこに現れるかわからない連中だ。できるだけ早く、ここを離れたい。そのためには、早くここを出て、この国にいるルシフェルという人物を探さないといけない。それにパルウァエでは、ジブリールは奴らと敵対していたようだったけれど、ひょっとしたら…という可能性だってあるだろう。

「ヴィルは…あの子はどうなったの?」

 一番気になっていたことを口にしてみる。

「簡単な聴取の後、そうだな…今日か明日にでも、あの少年を故郷へ送り届けるだろう。身の安全は保証する」

「…そう」

 完全にジブリールを信用したわけではないけれど、それを聞いて小さな安堵が私の胸を満たした。それでいい。ヴィルは私の事情とは無関係なのだから。

「随分と気にかけているんだな」

「そりゃ、私のせいで巻き込まれたんだもの。気にもするわよ」

 無意識に首元を触っていた手に、ゆっくりと力を入れた。苦しい。特に理由はないけれど、ついやってしまう癖。
 私は頭を振って、まだだるさを感じる脳を無理矢理覚醒させる。

 外にはあの男が一人だけ。ジブリール第一分隊の、隊長。サキ・スタイナー。
 どうやら見張りは彼だけのようだった。凶悪犯扱いはされていないのか、それとも、何か別の理由があるのか。それはわからないけれど、最悪の場合彼を出し抜けば、ここから逃げ出せるかもしれない。
 冷静に、冷静に。
 そうだ、サキ・スタイナーならば、ルシフェルという人物について知っているのではないか。しかし、まだ尋ねるタイミングじゃない。
 まだだ。確実に逃げ出せる、その直前まで。





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