1 いつも馬鹿にされてばかり…。 たまには、彼の知らない、アリエッタだけが知っている事が欲しい…。 そう思い、図書館で苦手な文字に向かい合うこと数日…。 「シンク…!」 「…アリエッタ?」 書類を片手に振り返るシンクは、ちゃんと足を止めてくれたから直ぐに追いついた。 「どうしたのさ、そんなに走って。」 「えっと…」 「そう言えば、最近図書館に通ってるらしいね?漸く少しは勉強する気になった訳?」 何処からそんな情報を仕入れたのやら、意地悪く笑いながら彼はそう言う。 相変わらずの彼の態度に、今日こそはアリエッタも負けるものかと言い返した。 「とりっくおあとりーと!」 「……は?」 今まで見たことのない、シンクの間の抜けた顔。 アリエッタは内心、勝ったと勝利を確信した。 「今日はハロウィン、です。頭の良いシンクなら、知ってるよね…?」 と、この台詞も対シンク復讐用に3日掛けて考えた。 その甲斐あってか、彼は少し悔しそうな顔をする。 「さぁ、聞いた事ないけど。何のおまじない?」 観念したのか、素直に聞いてきた彼に、アリエッタは満面の笑みだった。 「えっと、『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』って意味らしいです。」 「ふぅん。…じゃあコレ。」 納得した様子の彼は、ポケットから小さな飴玉を取り出してアリエッタの口に放り込む。 舌の上で転がるごとに、甘い味が染み渡った。 「美味しい…です。」 今日はシンクに一泡吹かせたし、良いことずくめだとアリエッタは思わず笑みを浮かべる。 が、此処で引き下がるシンクではなかった。 _ → back |