1 「ルークは……?」 自由行動の一日。 好奇心旺盛な彼なら、常に外を走り回っている時間。 それなのに、今日は彼の姿が見当たらない。 未だ寝ているのだろうかと、ティアは宿へと足を運んだ。 「…ルーク?」 ノックをしても返って来ない返事。 留守かと思いながらも一応確認するように扉を開く。 しかし、部屋の奥に見えたのは不自然に盛り上がった布団。 それは誰かがその中に居る事を示していた。 「…もう、ルーク。いつまで寝てるの?もうお昼……ルーク?」 その布団がいつも彼の寝る所だと理解していたティアは、直ぐに中の人物を理解する。 しかし、名を呼びながら近寄ったベッドでは、荒い息と赤い顔で寝込む彼の姿だった。 「ん……ティ…ア……?」 「…ルーク?具合、悪いの?」 「……。」 ぼんやりとした視線のままの彼が自分の名を呟くのを聞くと、状況を問おうとするが返事はない。 最近の出来事から、変に心配性となっていたティアは、直ぐに不安が募ってしまう。 「…大佐を呼んで来るわ。少し待ってて……」 背を向けてその場を去ろうとしたティアだが、それはルークの手に服の裾を掴まれた事で阻まれる。 「ルーク?大丈夫よ。直ぐに戻るから……」 「…いい……」 「え?」 「俺…これ以上、皆に迷惑…かけたくない…から……皆には……」 言わないでくれ、と続けたかったのだろう。 途中で言葉は途切れたものの、視線はティアに向いて離れなかった。 「…馬鹿ね。移動中に倒れられた方が迷惑よ。」 昔とは違う、周りへの配慮を考えたルークの発言に、少なからず喜びを感じながら答えたティア。 それは優しさのつもりでの言葉だったのだろう。 彼女の口元が柔らかく微笑んでいた事で、そう判断出来る。 しかし、今のルークにとってはそれすらも落ち込む材料となってしまう。 _ → back |