臨也♀→臨美
コンビニ店員大学生臨美ちゃんと常連客の高校生シズちゃん
最近バイトを始めたコンビニ。
よく来るお客さんの何人かと顔見知りになった。
その中で一際印象的だったのか、来神高校の生徒であろう男の子。
金髪で長身、無愛想だけど穏やかそうな少年。
ちょくちょく来るので、すっかり顔を覚えてしまった。
いつも必ず買うのはいちご牛乳。
顔に似合わず甘党なんだなぁ、と最初は思ったが、いまでは普通になってしまった。
ちょっと前に、よく来てくれるけど家近くなの?と聞いたらはい、とだけ返ってきて。
おもしろい子だなぁ、と思い、最近ではつい声をかけるようになっていた。
「あれ、そういえば今週あたり期末試験だっけ?」
「まぁ、」
「勉強してるー?」
あはは、と笑いながら問うと、渋い顔をした。
この反応は勉強してないな。
「まぁがんばりなよー、シズちゃん」
「…なんすか、そのあだ名」
「え?あー、君静雄くんでしよ?だからシズちゃん」
「なんで名前、」
「この前一緒にきてた眼鏡の子が言ってたから」
にこり、と笑顔で答えると納得のいかないような顔をした。
そんなにこのあだ名が気に入らなかったのだろうか。
「…あんたの名前は」
「え?」
「俺だけ名前知られてるのは不公平だろ」
「そうかな?あ、でも名札でわかるじゃん」
ね?と言って服の胸ポケットについた名札をシズちゃんに見せる。
けれどもどうも納得した様子ではなくて。
何が不満なんだろう、と思っていると、シズちゃんはゆっくりと口を開いた。
「それは苗字だろ。俺は名前を聞いてんだ」
「ああ、臨美だよ。折原臨美」
「ふーん」
名前を聞いた途端、そっけなくなるシズちゃん。
聞いたのはそっちなのに何なのだろう、その反応は。
ちゃんと名乗ったのになんだかむかつく。
シズちゃんのくせに。
「シズちゃんは」
「は?」
「苗字。教えてよ」
「…」
自分だけ名乗った上、あの反応が悔しくてシズちゃんに問い掛ける。
ただ単に聞きたかっただけかもしれないけど。
こんなチャンス、もうないかもしれないから。
「…平和島。平和島静雄」
「平和島静雄、かぁ。やっぱりシズちゃんのがしっくりくるね!」
「なっ…」
反論しようとするシズちゃんに、次のお客さんの邪魔になるからと告げる。
しぶしぶながら去ろうとするシズちゃんの後ろ姿に、ありがとうございましたーといつもの調子でマニュアル用語を投げ掛ける。
その瞬間、振り返らずに後ろ手を振るシズちゃんに、胸が高鳴った気がした。
…嘘だ、高校生に惚れるなんて、
顔が熱いような気がするけど、それをごまかすようにシズちゃんとすれ違いに入ってきたお客さんに向かってマニュアル用語を口にする。
ああもう、集中できなかったらシズちゃんのせいだ。
全思考ジャック
(まだ、顔が熱い、なんて)
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