キセキの顔も三度まで


!僕司、キセキ名前呼び
!赤司くんのキャラが迷走してる





「寒くなってきましたね…」


放課後の部活を終え、レギュラー陣がぞろぞろと帰宅するなか校舎を出た途端、テツヤはぽつりと呟いた。見るとテツヤはコートしか着ていなくて、寒そうにぶるりと身体を震わせていた。


「…テツヤ、その格好じゃ寒いのは当然だろう」


そう指摘するとテツヤは自分の格好を見つめたあと、そういえば、と続けながら白い息を吐き出した。


「今日はマフラーと手袋を忘れたんでした」
「全く…。変なところで抜けているな、テツヤは」


くすりと笑うとそうですね、なんて返ってきて二人して微笑む。
その間もテツヤは寒いのか、顔が赤くなっていく。その姿がなんだか見ていられなくて思わず手袋を外して手をのばした。


「あ、赤司くん…?」


ぴとり、と両頬を手で優しく包む。その頬はすでに冷えきっていて、つい咎めるような顔をしてしまった。


「こんなに冷たいじゃないか」
「赤司くんはあったかいですね」


なのにテツヤは気にもとめないままへにゃりと笑って僕の手に自分の手を重ねてきた。その手も冷たかった。


「…分かった。僕のマフラーを貸す。あと手袋も」
「!?いっいいです!それでは赤司くんが…!」
「別に全部貸すとは言ってない」


僕は一旦マフラーを外すと、テツヤの首にも巻き付けてから自分の首にも巻く。その行動に驚いて固まってるテツヤをいいことに外した片方の手袋をテツヤに渡して、もう片方を僕がする。お互いが手袋をしていない手を繋ぐと、僕は無理矢理僕のコートに二人分の手を突っ込んだ。
冷たいテツヤの手を、少しだけあたたかい僕の手がじんわりと熱をわけていく。そしてマフラーを共有した分密着した僕とテツヤは、息がかかりそうなくらいの距離になり、体温がじわじわと上がっていく。


「ああああかし、くん、これ、」
テツヤの声は震えていて、緊張しているようだ。どうやら僕の作戦は大成功だったらしい。
横を向いていいか分からずにおろおろしているテツヤを横目で確認してからにやりと笑う。


「これならあったかいだろう?」
「そ、そ、そうですけど…!」
「ふふ、テツヤはかわいいな」
「お前たちいい加減にするのだよ」


僕とテツヤがいちゃついているときにはなるべく口を出すなと言っているのにどうやら耐えきれなかったらしい。見かねた真太郎が口を開いた。それを期に他の奴らも次々と文句を口にする。


「そうっスよ赤司っち!黒子っち独り占めしてずるいっス!」
「テツ、今からでもオレにしろよ」
「オレも黒ちんぎゅっとしたい〜」


彼らもテツヤが恋愛的な意味で好きだった(いや、現在進行形だが)らしいが、行動にうつったのは僕が早かった。

あれは朝早い僕とテツヤが朝練をしていたときだった。二人きりというシチュエーションに酔ったのかいつもは隠し通している気持ちを気付いたら全部吐き出していた。テツヤは目を見開いて驚いていたがそれは僕も同じだった。やってしまった、と口を覆うも伝わってしまったものはどうしようもない。やはり今のは気にしないでくれ、そう言おうとしたのにテツヤはにこりと微笑んで、それはそれはとても嬉しそうに言った。「ボクもずっと好きでした」と。

あぁ、あのときのテツヤの笑顔といったらもうなんと表したらいいのか。呑気に昔のことを思い出していると、くい、と服を引っ張られた。見るとテツヤが心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。


「赤司くん…?大丈夫ですか?」
「あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていた」


流石に「テツヤの可愛さを表すにはどんな言葉が似合うかを考えていた」なんて言えないので笑って誤魔化す。
しかしテツヤはそれにのってくれず、むっとして眉を寄せた。


「ボクがいるのに考え事ですか…それに相談なら包み隠さずボクにしてほしいです。……恋人、でしょう?」
「テツヤ…!」


僕は感極まってテツヤに思いっきり抱き付いてぎゅうぎゅうと抱き締めた。ああもうなんで僕の恋人は可愛いんだ。


「ごめんねテツヤ。テツヤと晴れて両思いになったときのことを思い出していたよ」
「今は本物のボクが目の前にいます」
「うんテツヤ大好き愛してる」
「お前らいい加減にしろよおおおおお!!!!!」


今いいところだったのに。
テツヤは僕の頭に手を置き、子どもにしてみせるようにぽんぽんと撫でてくれていて(テツヤ以外がやるものなら即オヤコロだが)、僕はテツヤの首もとに顔を埋めていたのだ。めっちゃいいふいんき、間違えた、雰囲気だったのに。誰だ僕とテツヤのスイートタイムを邪魔したのは。
殺気を込めた視線を声のもとへ向ければ涙目の大輝、すでにわんわんと泣き喚く涼太、ふてくされた敦にイラつきを隠さない真太郎。先ほど叫んだのは大輝だったようだがどうやら全員の心の声らしい。


「だから!!目の前でいちゃつくのはやめてって!!言ってるっス!!」
「いくら赤ちんでも捻り潰したくなっちゃう…」


さすがに敦にまで言われてしまっては僕もテツヤも押し黙ってしまった。マフラーはテツヤに預けて離れる。でも手だけは繋いだままで。


「……すみません」
「……すまなかった」


二人して謝れば、不満はあれどみんな引き下がってくれた。
ちなみに僕と付き合ってからだが、全員から告白を受けたテツヤはいつも多少なりに罪悪感はあるらしい。「それでも赤司くんを前にすると…」と照れながら言われたときには僕の心臓には矢が刺さっていた。かわいかった。


「あ」


しばらくみんなで会話をしていれば唐突にテツヤから声が漏れた。
なんだ、と話し掛ければテツヤは少し言いづらそうにしながらも頬をかいて言った。


「この前赤司くんのお家にお泊まりしたときなんですが…」
「ああ、あれか。大丈夫、洗濯して保管してある」


テツヤが忘れ物のTシャツのことを言っているのだと気付いて返事を返す。


「わざわざすみません…今度取りに行きますね」
「うん、いつでも構わないよ」
「えっ?ちょっ…!?」
「テツ!?」


そして僕たちの会話に素早く反応したのは涼太と大輝だった。あ、泊まったことが話題だったからテツヤが言い淀んでいたのか。しまった僕としたことが。


「お泊まり会ってどういうことっスか!?」
「今度みなさんでやりましょうね」
「おう、テツ。…じゃなくて!赤司ん家に…!?ナニやったんだよ!!」
「人生ゲームだよ」
「ゲームでさえお金持ちになってしまう赤司くんにはいっそ感動を覚えました」


テツヤがさらりと涼太をかわして大輝が余計な勘違いをしないように言う。正直僕としてはナニまで進みたかったのだがテツヤの初々しい反応を見ていると当分まだ先だろうなと思っている。残念だがテツヤがかわいいので我慢できる、いや、する。


「黒ちんまだ無事なんだね〜」
「ととと当然なのだよ紫原!」
「?」
「テツヤはまだ知らなくていいよ、じっくり教えてあげるから」
「赤司くん…?」


テツヤの額に己の額をこつりとぶつけてみせればみるみるテツヤの顔が赤くなっていく。やっぱり初々しい!かわいい!大事なことだからもう一度言う!KAWAII!!


「だからいちゃつかないでって…」
「言ってるじゃないっスか〜〜〜!!!!」


敦と涼太の叫び、大輝と真太郎の悔しそうな顔に、再び二人揃って謝る羽目になったのは言うまでもない。
テツヤといると触れたくなるのはもはや生理現象だから仕方がないんだ!






キセキの顔も三度まで







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彩香さま、六万打企画参加ありがとうございました!遅くなってしまってすみません…!;

赤黒ちゃんを見守るキセキか、赤黒中心キセキ黒かで迷いましたが後者にさせていただきました。お気に召されれば幸いです(^ω^)
そして赤司さんのキャラが少しアレになってしまったのはすみません…本当にすみません…。


※ご本人様のみお持ち帰り、返品可となります。


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