無関心少年とキューピッドと


※暇人櫂くんとキューピッドアイチきゅん
※カードファイトしてません!





「…は?」


今日まで俺は何にも興味を示さず、ただただ退屈な毎日を送っていた。日々が過ぎるのを他人事のように見ていて、友人(と言うのもなんだが)も自分に構うのは変わり者しかいなかった。
そんな俺を見かねてか、その変わり者な友人がお節介を焼いて女との交流の場を設けたりもしていたが、やはり興味が微塵も湧かず、適当にその場を流したりしていた。
そう、今日までは。


「えっと、今日から櫂さんを誰かとくっつけるために来ました、キューピッドのアイチです」


俺が聞こえてなかったとでも思ったのか、もう一度言い直してから照れたように頬を赤く染める目の前の人物(?)はふよふよと浮いていた。これは一体どうなっているのだろうか。俺はいつものようにやることもなく帰宅してリビングの扉を開けただけだ。するとこの光景が広がっていて。


「………疲れてるのか」
「ぼっ、僕は幻じゃないですっ!」


仮眠をとろうと寝室へ足を向けると、少年は慌てて俺の前へ飛び出してきた。


「キューピッドだか天使だか知らんが帰れ」
「だ、だめです!」
「帰れ」
「…っ」


あまりにしつこいので睨んでやると、少年は怯んで涙目になった。これで帰ってくれるだろうと安心して寝室へ向けた足を進めようとすると、少年は突然ぽろりと涙をこぼして、声をあげて泣き始めた。


「ごっ、ごめんなさい…っ、でも、僕、帰れなくて、」
「は?」


どうやら"帰らない"のではなく"帰れない"らしい。まずは少年の話を聞くしかないか、と諦めて少年をリビングへと促した。


***


飲み食いは出来るらしいから彼の分にホットミルク、自分の分にコーヒーを用意して少年の隣に腰を下ろす。
何も言わず、沈黙していると、ようやく涙が止まって話が出来るような状態になった少年が話し始めた。


「えっと、信じてもらえないでしょうが、僕は天界から来ました」
「アイチ、と言ったか」


そう言えば名乗っていたな、と少年の名前を記憶に刻む。


「はい!それで僕がここに来たのは君の両親に依頼されたからです」


まさかの登場人物に驚きに目を見開く。しかしアイチはホットミルクを見つめていて、俺の様子には気付かず続きを言うために口を開く。


「亡くなった君の両親は、今までずっと君を見守ってきました。だけど…」
「だいたい分かった」


幼いときの記憶しかないが、あの心配性の両親のことだ。きっと俺が無関心すぎてこいつを寄越したのだろう。容易いイメージに溜め息をこぼす。


「それで、帰れないというのは」
「キューピッドは依頼を達成させないと天界へ帰ることが出来ないんです…ごめんなさい」


アイチは再び謝ると、今度は完全に黙ってしまった。
まるで死刑申告を待つように、ぎゅっと目を瞑ってぷるぷると肩を震わせる姿は俺がいじめているように感じられて思わず眉を寄せる。


「おい、」
「えっと、櫂さんは誰かと付き合う気はないんですよね。だったら僕、出ていき」
「待て」


話も聞かずに立ち上がるアイチの腕を掴む。キューピッドって触れるのか、と場違いな考えが脳裏を過ぎる。


「大方俺のせいだろう。お前が出て行く必要はない」
「…?」


疑問符が頭に浮かんでいるアイチに俺は続けた。


「とりあえずはうちにいろ。面倒くらいは見る」
「えっ…ええ!」


そう告げるとアイチは一瞬固まったあと、ぶんぶんと首を横に振った。


「そそそそんなの櫂さんに悪いです!」
「別になんとも思わない」


別にアイチ一人増えたところで何も困ることはないと思う。
それに、何故だかこいつを余所にやるのことを考えてみたら気に食わない。何にこの気持ちが芽生えたのかは知らないが。


「え、えっとじゃあ…よろしく、お願い、します…」


相当頑固なのか、暫くの間無言で見つめ合っていたが、先に折れたのはアイチだった。視線をさまよわせながらもそう言って、にこりとはにかんだアイチはちょっと可愛いとか思ってしまった。







無関心少年とキューピッドと







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アイチきゅんマジ天使って考えてて思い付いたんですがこれ天使と違う



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