不器用も程々に


※柱稽古延長時空



 冨岡義勇は竈門炭治郎にとって恩人である。それはもう抱えきれない程にたくさん感謝することがあり、仕事で返せとは言われたもののそれだけではどうにも間に合わないくらいの大きな恩なのだった。

 ここのところ、炭治郎の抱えるその恩がますます膨れ上がる事態になっていた。何故なら義勇から様々な贈り物をいただくからだ。
 ひたすらに義勇の後ろをつきまとった三日間から少し。他の者に遅れて柱稽古に参加できるようになり、鍛錬に励む最中義勇の屋敷にお邪魔させてもらえるようになっていた。二人きりの空間が心地よくて、ここ最近の平和なひとときも相まって炭治郎は完全に浮かれきっていた。
 そんな折、ある日義勇に名前を呼ばれて炭治郎は花を飛ばして駆け寄った。稽古の準備の為忙しくしている兄弟子と過ごせるのはもっぱら夕刻以降になってしまうものの、以前と比べると見違えるくらいに打ち解けたのだ。喜ばしくない訳が無い。
 それに加え、ようやく彼の口から「炭治郎」と発せられる嬉しさも合わさるとこの上ない幸福を感じる。炭治郎はそれらの感情を全面に押し出して義勇に返事をした。
「どうしましたか?」
「やる」
「へっ?」
 たった二文字の言葉ととも差し出されたのはキヤラメルと書かれた小箱。一瞬の間それが何なのか理解しかねて、しかしすぐさま善逸から教えてもらった西洋の菓子だということに辿り着く。同時にさらりと気軽に貰える物でもないことにも。
「ちょっ!? 義勇さん待って……!」
 炭治郎が呼び止める暇もなくスタスタと歩いていってしまう義勇を追いかける。
「こんな高価な物っ、いただけません……!!」
「何故」
 立ち止まってくれたかと思うとくるりと振り返り、不思議そうに首を傾げる兄弟子に炭治郎はつい反射で眉をひそめた。
「何故って……俺は義勇さんに物をいただく理由がありません」
「……礼だと思って受け取っておけ」
「え!? いや、だから、それが分からないんですってば!!」
 兄弟子から身に覚えのないことを言われ困惑するばかり。じゃあせめてと「伊之助たちや蝶屋敷の子たちと分けますね」なんて微笑むと途端に義勇はむすりと不機嫌そうに眉根を寄せた。
「お前のその謙虚さを、偶に恨めしく思う」
「っ、」
 はあ、と吐かれたため息にびくりと肩を震わせると、義勇は炭治郎の頭に手を置いた。撫でられる感触に目を瞬かせ、呆気にとられた顔で兄弟子を見上げる。義勇は先刻とは打って変わり優しげに苦笑して炭治郎を見つめていた。
「どうしてもというなら分けてもいいが。多少なりとも俺の気持ちを汲んでくれるなら、炭治郎に食べてほしい」
 狡いと思った。滅多に見れることのない微笑を浮かべてそんなことを言われてしまえば、炭治郎には断われっこないのだ。
 黙ってこくりと頷いた炭治郎に、義勇は満足そうに目を細めた。

 しかしその出来事は始まりに過ぎなかった。
 それ以降、殆ど毎日義勇から物を贈られるのだ。菓子も種類を変えて幾つか。やけに視線を感じると思った翌日からは着物も何着か。着物はあまりにも高価すぎて受け取れないと真っ青になりながら首を横に振ったのだけれど。
「俺は着れないから、炭治郎がいらないのなら捨てるしか」
「ッ有難く頂戴いたします!!」
 脅しか。食い気味に発言して着物を持った手を引っ込めざるを得なかった。兄弟子の金銭感覚がどうなっているのか切実にお聞きしたい。貰われなければ捨てるっていくらなんでも極端が過ぎる。
 ──だから、おかげで「お前の手料理が食べたい」と言われながら渡された食材も変に構えてしまったのだった。

 炭治郎は悩んだ。義勇に贈り物を止めてもらうにはどうしたらいいのかを。
 そこで作戦を立てた。早速実行すべく炭治郎は拳を握る。これ以上義勇から与えられ続ければ確実に壁を作ってしまいそうで、それだけは避けたかった。なるべく対等でいたい。おこがましくもそう思うのは悪いことなのだろうか。
 炭治郎は彼から貰った着物を抱いて、そっと目を瞑った。

 作戦その壱、自身のこととは明言せずに義勇に伝える。
 友人が、という体で困っていることを告げてみる。直接伝えるには申し訳ないし、義勇から気にかけてもらえるのが嫌という訳でもない。ただ貰ってばかりの立場が許せないだけなのだ。
 客観視できれば義勇だってきっと異常なことだと気がついてくれるに違いない。そう願って炭治郎は兄弟子に話しかけた。
「義勇さんっ! あの、あのですね……! 俺の友人のこと、なんです、けど……」
 が。嘘をつくのが苦手な炭治郎は何やら変な顔を晒していたらしく、それを指摘され最後まで言い終える前に義勇に体調を気遣われた。そのまま強制的に蝶屋敷に送り出されてしまって、言いたいことは終ぞ告げられることはなかった。
 縁側を借りた炭治郎は深々とため息を吐き出す。むしろこれで良かったのかもしれない。あのまま話を続けていても、炭治郎自身のことを告げているだと察せられて義勇の心を傷付けていた可能性だって否定できないのだ。
「なんと……不甲斐なし……」
 情けなさに炭治郎はしおしおと項垂れるしかなかった。
 ──作戦一つ目、失敗。

 気を取り直して、作戦その弐。貰ってばかりで申し訳ないと思うのならば、炭治郎も何か贈ればいいのである。
 炭治郎の行動は早かった。判断が遅ければ脳内の師匠に怒られてしまうので。
 意気揚々と町に繰り出した炭治郎は軽い足取りで練り歩き、しかし明るかった表情は徐々に曇っていった。
 どれもこれも、決定打に欠けるのである。
 それに思い出したこともある。以前後藤に柱の給金には際限がないと教えてもらっていたのだ。つまり彼は欲しいと思えば何だって手に入れられる。そう考えるともうどんな物を渡せば喜んでもらえるのか、感謝の気持ちを伝えられるのか、分からなくなってしまったのだ。
 人から贈られてこそという面から悩んだりもしたのだが、義勇に花を愛でる趣味があったとは聞いていないし、菓子はあまり好まないと言っていた。そもそも兄弟子が笑っている場面はたまたま夕餉に出した鮭大根を前にしたときくらいで──。
(……じゃ、ない、ような気がする……!)
 炭治郎の思い違いでなければ、最近の義勇はよく笑っている。と言っても大口を開けて笑うようなものではなく、ほんのわずかに口角が上がって眦が柔らかくなるくらいの微笑だ。だが普段は笑わない美形のそんな表情は貴重なのもあってとんでもないのだ。あれをまともに食らって平気でいられるものか。
 誰に聞かせるでもない胸中での力説に自分で同意しながらふらりと一歩踏み出したところで、炭治郎は聞こえてきた声にひどく驚愕することとなった。
「炭治郎?」
「どぉわっっ!!?」
 今までにない素早さを発揮して振り向くと、背後にはまさにこの瞬間炭治郎の脳内を占めている男が佇んでいた。
 挙動不審な炭治郎など大して気にせず、小首を傾げて義勇は口を開く。
「珍しいな、炭治郎が一人で町にいるとは」
 友人と一緒じゃないのかと暗に問うた兄弟子に、炭治郎はあー、と意味を成さない呻き声を発した。
「……ちょっと、買いたいものがありまして、」
「? そうか。どれをだ?」
「いやそれは……」
「遠慮するな、何でも言ってくれ。金ならある」
「義勇さんッッッ!!!」
 じゃり、と金属が擦れる音とともに取り出された、見るからに重そうな巾着。往来でなんてものを出してくれるのだと、炭治郎は思わず兄弟子にもかかわらず怒鳴ってしまった。
「いきなり大声を出さないでくれ。驚くだろう」
「吃驚したのはこっちですよ!! 早く仕舞ってください!!」
「分かった。それで? お前の欲しい物とは何だ」
「…………あの。もしかして、義勇さんが買ってくれようとしてます?」
「そうだが」
 当然とばかりに肯定されて、炭治郎は天を仰ぎたくなった。いつからこの兄弟子に貢ぎ癖がついてしまっていたのだろう。もしや最初からなのか。いくら彼の物欲が薄くて給金も貯まっているとはいえ、これではすぐに尽きてしまうではないか。
「義勇さん、他の人たちにも同じことしてるんですか? 流石にそんな使い方では……」
「は? 炭治郎だけに決まっているだろう。そもそも俺はお前のようにあまり顔が広くない」
 それじゃあまるで、炭治郎だけが特別というようなものではないか。
(いやいや! 何を考えているんだ俺は!!)
 慌ててその考えを振り払った炭治郎は「とにかく!」と声を張り上げた。
「無駄遣いは駄目だと言っているんです! というか俺は義勇さんから貰いっぱなしなのが申し訳なくて、そのお礼を見繕いに来たんです。だから貴方から買ってもらっては意味がありません!」
 黙っていて驚かせようと思っていたのに台無しだ。だがここまで来てしまったのならと、炭治郎は直接尋ねてみることにした。
「という訳で、義勇さんの欲しい物を教えていただけませんか?」
 刹那目を丸くした義勇。炭治郎は彼が何を要求するのかドキドキしながら待った。
 けれど、義勇は顔を顰めて咎めるように炭治郎の名を呼んだ。
「そんなことしなくていい」
 兄弟子から放たれた冷気が炭治郎の背筋を震わせる。ピシャリと突き放すように告げられたその言葉は炭治郎の胸を深く抉った。
「なんで、ですか……」
「必要ないからだ」
「必要……ない……」
 ついさっきまで舞い上がっていた心が一気に突き落とされていくのが分かった。抱えていた思いの何もかもまで拒否された気がして、目の前の景色が遠ざかっていく。
 その後は義勇とどう喋ったのか覚えていない。気づけば蝶屋敷の前だった。
 なんとなく、彼の屋敷にはもう顔を出せないなと思った。自分が酷い言い逃げしたのは薄ぼんやりと記憶にある。きっと義勇も炭治郎のことなど見たくないだろう。
 ──作戦二つ目、失敗。
 そして好都合といっていいのか、次に立てていた作戦というのが義勇と会わないようにする、というものであった。



  ◇  ◇  ◇



 その命尽きるまで、義勇には無縁の感情だと思っていたのだ。竈門炭治郎なる人物が義勇を引っ張り上げてくれるまでは。
 簡潔に述べると、冨岡義勇は弟弟子である竈門炭治郎に恋慕を抱いてしまった。
 人の感情とは不思議なもので、己の想いを認めるだけで世界が見違えるようだった。何気ない毎日が彩り始め、好いた相手が輝かしく見える。
 義勇の説得が済んでも変わらず日参してくれる炭治郎は、本日も快活な笑顔を振り撒いて冨岡邸の戸を叩いたのだった。

 さて、義勇は初めての恋心にとにかく浮かれきっていた。親友が見れば一喝されそうな程に。
 そして己はその方面では貪欲なようで、できれば炭治郎と想いを通わせたいと願うまでに心情が変化していた。
 しかしここで問題が発生する。これまでの人生においてその手の経験がなかった義勇は意中の相手の気を引くにはどうすればいいのか分からなかった。無い知識を振り絞って出した考えは『贈り物をする』であった。
 これまでは任務に没頭し、わずかでも時間が空けば鍛錬と鬼を滅ぼすことに全てを費やしてきた、そんな何の面白みもない男には炭治郎のような才能溢れる輝かしい未来のある子に似つかわしくない。
 義勇が唯一持っているものといえば、貯め込んだ給金くらいだろう。どうせ使い道のない金だ。炭治郎に喜んでもらえるのならいくらでも差し出せる。
 かといってそのままでは受け取らないだろう。真面目で頑固者の弟弟子は口数の多さであっという間に義勇を丸め込んでしまう。そんなやりとりが容易に想像できてしまう義勇は、ならば物を買って与えればいいことに気がついた。それなら大して気負わずにいてくれるのではないかと。
 その考えに至ると、義勇は早速行動に移したのであった。

 贈り物をし始めて十日程経っただろうか。炭治郎は戸惑いながらも義勇が渡す物を素直に手に取ってくれていた。それに義勇は大層満足していたのだが、その日町で珍しく一人で佇む炭治郎を見かけた。心を浮つかせながら声をかけると、随分と驚かせてしまった。
 話を聞けば買いたい物があるという。義勇は此処で居合わせた偶然に感謝した。折角なら欲しい物を与えたいというのが本音。無理にでも聞き出そうと口を開けば、なんと義勇への贈り物を探しに来たのだと言った。
 気持ちはとても嬉しかったのだけれどそれでは意味が無い。義勇は炭治郎を振り向かせたいが為にやっている行為なのだから、別に気に病む必要などないのに。
 だから義勇ははっきりと告げた。今後また同じことが起こってはいけないので。

 ──そこでの言葉選びを誤ったのだと気がついたのは、五日も後であった。
 次の日もその次の日も、炭治郎が義勇の屋敷を訪れることはなかった。それまでは二日と空けずに顔を見ていた弟弟子が何も言わず現れなくなったのは十中八九あの日の義勇が原因だろう。確かに別れる前、いつもの弾けるような笑顔が消えていた。気持ちを無下にしたのだと思われたのかもしれない。そんなつもりはなかったのに。
 義勇は言葉を間違うことが多いらしい。未だに自覚が持ててすらいない未熟者だ。
 当てといえば、蝶屋敷しかなかった。というのも炭治郎が処刑されかけたあの柱合裁判以降何かと世話になってきたと本人から聞いているのだ。怪我の多さに心配になるが、あの子が戦った相手のことを考えると当然といえよう。義勇が知るのはいつもお舘様から飛ばされる鎹鴉の言伝で、十二鬼月が倒された旨とともに付け加えられる功績者に炭治郎の名が出てくるのを数度も聞いた。
 凄いことだ。裁判では鬼舞辻を倒すと叫んで他の柱に笑われていたあの子も、今ではその内の柱の殆どから認められる程に成長した。義勇だって、水柱の座を継ぐ逸材だと信じていた。
 ──結局は、叶わなかったけれども。
 しかし今はそれでも良いと、心の底から思えている。考えを改めさせてくれた炭治郎には感謝してもしきれない。弟弟子はよく義勇に抱えきれないくらいの大きな恩があると言うが、義勇はそうは思わない。炭治郎のおかげで自信が持てるようになったのだ。あの子は義勇のことを卑下し過ぎではないかと評したが、炭治郎こそ己を過小評価していると義勇は思う。まあ、そんなところも可愛らしくて、義勇が耳元で囁いて存分に言い聞かせてやりたいとも想像してしまうのだが。
 邪念に気を取られる己を叱咤している内に蝶屋敷に辿り着いていた。突然訪ねてきた義勇を此処の主人はチクチクと刺すような小言を添えながらも迎え入れた。「炭治郎くんなら此方です」と言ったときの胡蝶の視線が何やら含みのあるものに思えて少しだけ居心地が悪い。
 案内された部屋に通されると、中では炭治郎がうつらうつらと船を漕いでいた。だが優秀な鼻を持っているからか、すぐに義勇の存在に気づいて目を見開く。音には出ずとも炭治郎の口はどうして、の形に動いていた。
「炭治郎に会いたかったからだ」
「……怒って、ないんですか」
「何が」
 義勇は最後に会ったときを思い浮かべてみたが、「義勇さんのばか!」と言われたくらいしか出てこない。理由は分からなかったけれど愛いことを言うな、とか滅多に見れない炭治郎を知れたな、としか考えていなかった。
「えっ、だって俺きっと義勇さんに失礼なこと……!」
「ばか、と言われたことなら全く気にしていなかった。むしろ避けられていた方が堪える」
「う、」
 後ろめたいのか、炭治郎の視線が泳いだ。
「俺はまた何か間違えたのだろうか。ならば教えてくれ。謝りたい」
「…………そういう、ところですよ」
 責めるような口調の義勇は肩を落とす。これまで人との関わりを断ってきた義勇にとっては感情の機微を感じ取ることがどうにも苦手なのだ。師や弟弟子のような鼻も持たないので打つ手もない。
「〜〜〜っあーーもう!! 俺、義勇さんに断られて傷付いたんですよ!!」
「!?」
 突然間近から発せられた大声にびくりと身を跳ねさせる。しかもその内容が聞き捨てならないものだから、驚きは倍である。
「俺が炭治郎を、」
「そうですよ! 贈り物をしてくださる気持ちは嬉しいですけど、あんなに何度も貰ってはこちらの気が収まりません。だからお返しを、と思ったのに、いらない、なんて……」
 炭治郎はそこで言葉を詰まらせ、じわりと涙を滲ませた。それに焦ったのは義勇だ。炭治郎を泣かせたという事実だけが脳内を占めていき、どうしようと狼狽えることしかできない。とりあえず羽織の袖で溢れた涙を拭ってやると、炭治郎はますます喉を引き攣らせて泣いてしまった。
「た、たんじろう……」
「……っ、なんで、ですかぁ……っ! おれの、きもちは、いらないって、いうんですかっ……? ひどいです、ぎゆうさんは、ひどいひと、です……!」
「そんなことはない。炭治郎の気持ちなら何だって嬉しい」
 弱った。この子に泣かれるとどうしたらいいのかさっぱり分からなくなる。とにかく安心させなければと口を動かした。
「……炭治郎が好きで、どうしたら想いが伝わるか考えた。俺には特筆することなどないし、あるものといえば金銭くらいだと思って……だからお前に礼などされてしまっては意味が無くなるんだ」
 分かってくれ。懸命に並べた言葉たちは炭治郎に届いたのか、ぴたりと泣き止み呆然とこちらを見つめる鮮やかな柘榴色。
「え……なに……? なんて……? ぎゆうさんが、おれのこと……?」
「ああ。俺は炭治郎が好きで、いっとう大事だよ」
「あ、あまっ……ほんとだ……?」
 炭治郎の反応が悪いものには見えなかったからつい胸の内を曝け出してしまった。金魚の如く口をぱくぱくさせて、じわりと頬を色づかせていく炭治郎に目が釘付けになる。
「良ければ、返事を聞かせてもらえると有難い」
「ううっ……。……貴方を見るとふわふわして、でも心臓が、きゅっと苦しくなります……。これが恋と呼ばれるものなら、俺は義勇さんのことが好き、みたい、です」
 義勇の羽織の端を摘んでいつもとは一転してしおらしく、吐息と聞き紛う程の声量で呟く炭治郎を堪らず抱きしめる。夢にまで見た炭治郎の身体はあたたかく、その温度が義勇の心を満たしていく。
「ふふ……今の義勇さんなら、分かりやすいです」
「……」
「俺は物になんて釣られませんから。ちゃんと言葉にしてくれれば、それで良かったんですよ?」
「……うん……。よく、思い知った」

 これからは気を付けようとしっかりと頭に刻み込んだ義勇が、炭治郎を愛おしいと感じる度に逐一愛の言葉を囁くようになって。
 普段の口数の少ない義勇との差も相まってその威力は凄まじいらしく。毎回赤面していた炭治郎がついに音を上げもう少し控えめでもいいんですよ、と震える声で告げてくるまであと──。



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