ここからが僕らの


※黒子っちが好き過ぎて赤司くんがキャラ崩壊してます。





俺は黒子テツヤが好きだ。
あの空色の艶々した髪も、バスケ部なのにほっそりとして、でも少しだけ筋肉のある雪のような白い手足も、練習のあとに熱で紅潮する頬も、ふっくらとした柔らかそうな唇も、そして髪と同じ色をした普段は何を考えているか分からないけれど試合のときはころりと変わって意志をしっかりと主張する瞳も。
彼の全部が好きだ。
バスケは下手なのにひたすら愛しているところとか、読書家なところとか、バニラシェイクが好きなところとか、意外に男前なところとか、天然なところとか、負けず嫌いなところとか。
好きなところを上げだしたらキリがないくらい。いつだって彼のことを考えている。
そしてこの間彼に告白した。
別に自惚れていたわけではないが、ずっと見ていたから分かる。彼も僕のことが好きだと知ったからだ。
しかし彼はまだ自覚していないようだったから、付き合って意識させようとした。そのためにまずはと告白したのだ。
彼がくろちゃんねるをよく利用していたのももちろん知っていたからあらかじめあそこに僕の下僕を置いておいた。案の定スレを立てて相談したようで、うまい具合に進んで、結果僕と彼、テツヤは無事に付き合うことになった。返事も聞かずに取り付けたデートの約束のメールの返信は行きますと簡素な文の下に恥ずかしげに告白のお返事、不束者ですがよろしくお願いします、と彼らしい丁寧な文が添えられていた。これについ口元が緩んでしまったのは秘密だ。


***


次の日、時間の10分前にきょろきょろと辺りを見回しながら待ち合わせ場所にやってきたテツヤにここだ、と手をあげる。それに気付いたテツヤは慌てたように駆け寄ってくる。


「すみません、赤司くん。待たせてしまったですかね」
「そんなことないよ。テツヤだってはやいじゃないか」
「待たせるわけにはいかないと思ったので…」
「ゆっくりで良かったのに。急いで転んだらどうするんだ」


そう言うとテツヤはぷくりと頬を膨らませてさすがのボクもそんなドジはしません、と拗ねたようにそっぽを向いた。
その仕草が可愛くて僕は笑顔を浮かべながらも内心身悶えていた。テツヤ!かわいい!!天使!!!心の中ではそう叫びながら外見は平静を装いじゃあ行こうか、とそっと手を差し出すとテツヤは少しだけ頬を染めて、ぎゅっと握り返してきた。あれ、もしかして僕の目標まで近い?


「今日はどこに行くんですか?」
「まずは腹ごしらえかな。そのあとはテツヤが行きたい場所でいいよ」
「じゃあボク本屋に行きたいです」
「いいよ。そういえばテツヤにすすめたい本があったんだ。ミステリー物なんだけど…」
「それは興味があります…!」


他愛のない会話をしながらゆっくりと歩を進める。行き先はいつものマジバでいいだろう。というかマジバに行きたい。理由はもちろん。


「やっぱりマジバのバニラシェイクは神だと思うんですよ…」
「テツヤはほんとうにバニラシェイクが好きだね」


バニラシェイクを飲むテツヤが可愛いから。
見てくださいこの幸せそうな顔を!!とどこぞの通販のような台詞を言いたいくらいに可愛いテツヤを見てほしい…、いややっぱり今のテツヤを見たら誰もが虜になってしまいそうだからやめておこう。


「当然ですよ。バニラシェイクは天使です。マイジャスティスです」


僕的にはテツヤまじ天使、マイジャスティス、なんだがここはぐっとこらえて苦笑する。そうこうしているうちにずこー、と啜る音が聞こえてきたため席を立つ。


「ご馳走さまでした」
「じゃあ次は本屋だね」
「はい」


さっき話した本の内容を思い出したのかうずうずとするテツヤを見て眩暈がした。もうやめてくれ僕のライフはもうゼロなんだ。テツヤの影が薄くて良かった。こんな可愛い姿を他の人間に見られなくて。
だから、テツヤの可愛さに悶々としていた僕にはそのとき垣間見せたテツヤの表情が見えていなかった。


***


本屋を出れば、太陽は既にだいぶ傾いていた。そろそろテツヤとの初デートも終わりか、と俯いていると、横からテツヤの息を呑む音が聞こえてどうしたのかと窺った僕は驚愕した。
テツヤは泣きそうに顔を歪めて唇を噛み締めていたからだ。


「テツヤ…?」
「やっ、ぱり、赤司くんは、…ボクのことを…、」
「?」
「…っからかっていたんですか…?」
「………え?」


涙をこらえる為か、途切れ途切れに言葉を紡ぐテツヤに僕は言われたことの意味が分からず間抜けな声を漏らした。立ち止まってテツヤをじっと見つめる。向かい側にはブランコとベンチだけの小さな公園が存在しており、誰もいないその公園からはブランコが風に揺られてきいきいと構ってほしそうに音を立てていた。


「ボク、告白されたときは正直断ろうと思ったんです。でも、その、色々あって考えたんです。それで赤司くんに告白の返事を送ったときすごく恥ずかしくなって、耳まで真っ赤になってしまって、目の前に赤司くんがいなくて良かったって。そこで気付いたんです。ああ、ボク本当は赤司くんのこと大好きだったんだなあって。だから、今日のデート、実はすごく楽しみにしてたんですよ。でも、」


今何が起こっている?テツヤは何故泣きそうにしている?テツヤが顔を真っ赤にしてまで告白の返事をしてくれた?テツヤがデートを楽しみにしていた?
いつものように脳はフルスピードで情報を処理しているのに全く追いついていないようだ。容量オーバー寸前の頭は僕に言葉を喋らせない。


「…今日の赤司くんはずっとどこか上の空でした。目はボクを見ているはずなのに、なんだか違うことを考えているようで…やっぱりボクじゃ駄目だったのかなって…」


ああ、ひとつだけ分かった。僕は、テツヤに勘違いをさせている。
それに気付けばあとは早かった。
ぐい、とテツヤの腕を引っ張って自分の胸の中に閉じ込める。逃げられないように、強く抱き締めて。


「あ、かし、くん…?」
「ごめんテツヤ。ごめん」
「え…?」
「それは誤解だよ。確かに今日の僕はぼうっとしてたかもしれない。だけどそれはテツヤとの初デートに浮かれていただけだよ」


やられっぱなしの僕ではない。今度は僕がテツヤを黙らせることになった。


「テツヤがずっと好きだった。一目見たときからずっと。こんなに本気になったのは初めてだったから僕だってどうしたらいいか分からなかった。だから強引なこともした。だからテツヤが僕を好きだって言ってくれたことが夢みたいだ」
「ほんとう、ですか?」
「僕の心臓の音が聞こえるだろ」
「…っ!」


このばくばくと煩い心臓の音が聞こえたらしいテツヤはさっき言っていたように、耳まで林檎色に染まっていた。たぶん、勘違いした恥ずかしさと、両想いだったという事実のふたつが原因だろう。いや、微かに抵抗しようとしている様子から今の状態も恥ずかしいのだろうか。


「テツヤ」
「あかしくん、」


名前を呼べば、テツヤはようやく顔を上げた。上目遣いに涙目は卑怯だ。


「テツヤ可愛い」
「なっ…!」
「今日もずっとそのことを考えてた。勘違いさせてすまなかった」
「もう、いいです…」


可愛いと言われるのがくすぐったいのか、また僕の胸に顔を埋めて、蚊の鳴くような声で呟かれたそれは、観念した色をしていてくすりと笑みが漏れる。


「テツヤ、好きだよ」
「ボクも、赤司くんがすきです」


そしてそうっと腰に回された手に夢ではなく現実なのかと嬉しくなった。







ここからが僕らの
(スタート地点だ)







----------
リーフィアさまへ捧げます。六万打リクエスト企画に参加してくださってありがとうございました!

とりあえず色々すみませんでした。(スーパージャンプスライディング土下座)
赤司くんが誰だよお前状態についてと黒子っちが乙女すぎて申し訳ないです…。黒子っちが好き過ぎて空回りしてしまう赤司くんを書こうとしていたんですが…難しい…。
喜んで頂けたら嬉しいです…!

※ご本人さまのみ返品、お持ち帰り可になります。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -