体温急上昇


むくりと起き上がるとそこは知らない部屋だった。あれ、ボクどうしたんですっけ。


「あ…そういえば熱出してるのに気付かないで皆さんの前で倒れたんでしたね…」


確か一度目を覚ましたけれど赤司くんにまだ寝てて良いと言われて…、あれ。ボクにはそこまでしか記憶がなかった。


「黒子、起きたのか」
「…あっ、赤司くん!?」


扉を開けて出てきたのは赤司くんだった。じゃあここはもしかして赤司くんの部屋なのだろうか。そう思って見回すと、自分が寝ている真っ白なベッドに勉強机、本棚にはバスケに関する本や難しそうな本がずらりと並んでいる。それから見るからに良さそうな箪笥とクローゼットがある。赤司くんも割と普通だったのか、と少し失礼な事を考えているとそれを見抜いたようになんだ、と睨まれた。


「まあいい。それより体調は大丈夫なのか」
「あ…少しだけ」
「そうか。これ、粥作ってきたから食え。でないと薬飲めないだろ」


先程から赤司くんが何か持っていたから何だろうと不思議に思っていたそれはお粥だった。赤司くんが料理するところなど想像も出来ない為、思わずぽかんと口を開いているとその口にお粥を放られた。反射的にぱくりとスプーンをくわえると赤司くんは微笑んだ。


「あ、あひゃひふん」
「美味いか?」
「…はい」


なんとか飲み込んで答えると赤司くんは良かった、と言って一息吐いた。


「あの、赤司くん、ここは赤司くんの部屋で合ってますか?」
「うん、そうだけど」
「では何故ボクはここに」
「ずっと寝てたから」


頭の上にクエスチョンマークを浮かべたボクは普通だと思う。え?と聞き返すと赤司くんはまるで次の授業の教科を言うように当たり前のように言った。


「親にはオレが責任持って面倒を見ると電話しておいたから大丈夫だ」
「あ、いや、赤司くん、ボクが聞きたいのは、」
「なに、オレの言う事に何か文句でも?」
「イエ、ナンデモナイデス」


そうだった、この人には逆らえない事をすっかり忘れていた。ずっと優しかったから本当は赤司くんの双子かと思っていたけど赤司くんはやっぱり赤司くんだった。


「とにかく心配はいらないから早く飯食って薬飲んで寝ろ。治るものも治らないでバスケ出来ないぞ」
「いただきます」


赤司くんが心配いらないと言っているのだから心配いらないのだろうと自分を納得させてそそくさとお粥をかきこんだ。それから薬も飲んだ。苦いのは嫌いだったけれど隣にいる赤司くんを一瞥して無理矢理流し込んだ。


「大丈夫か」
「…大丈夫です…」
「そうか、じゃあ今日はさっさと寝ろ、おやすみ」
「まっ、待ってください!ひとつだけ…」
「どうした」


ずっと聞きたかった事があった。どうして赤司くんは。いや、赤司くんだけ。


「どうしてボクが不調だと一目で気付いたんですか?」
「……それはずっと見てるからだよ、テツヤ」
「あ、かし、くん…?」


この感じは確かボクが眠る前に聞いた赤司くんの声。あれは熱にうかされたボクの幻聴ではなかった。自然と顔に熱が集まる。


「…それは…、」
「テツヤが風邪治したら教えるよ」


ちゅ、とリップ音をたてて赤司くんはボクの額にキスを落とした。
これで熱が上がっていたら赤司くんのせいですからね。







体温急上昇
(早く治したいんですけど…!)







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テツヤの異変にはすぐさま気付くキャプテンって…いいよね…('ω')



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