三和アイ


*恋単語 傘


ざあざあと激しく降る雨の音がする。
雨の所為で人っ子一人いない公園の小さな屋根のある場所でアイチは一人雨宿りをしていた。


「…雨、ひどいなぁ…」


ぽつり、と呟いたそれはすぐに雨の音にかき消された。
今日のアイチはエミに起こされたのだが、その時に起きれずいつもより更に遅く起きてしまい、天気予報を見る暇さえなかった。慌ただしく家を飛び出した為、母が言ってる事も聞こえなかった。


「明日からはエミに起こされたときに起きよう…!」


小さな決心は果たして決行されるのかはさて置いて。
アイチは現実逃避していた頭を目の前の事態に向けた。
アイチが雨宿りをする為にここへ駆け込んで既に30分は経過していた。しかし雨は降り止む気配を一向に見せず、アイチは大きな溜め息を吐いた。この様子だとまだまだ降り続けるであろう雲行きを見て、さてどうしたものか、いっそ濡れるのを覚悟して家まで走れるべきか、と思案していると、公園の入り口を通るアイチも見知る金髪を見つけた。
アイチがあっ、と声を上げる前に彼はこちらに気付いたようで、アイチを見るなり驚いた顔をしてばしゃばしゃと水が跳ねるのも気にせず金髪の彼、三和タイシはアイチに近寄ってきた。


「アイチ!?何してんだ、こんな所で!」
「朝寝坊してつい天気予報見逃して傘忘れちゃって…」
「雨宿りしてたのか」
「うん…」


心配して損したぜ、とほっと一息吐く三和になんだか申し訳なくなってしまってアイチは視線を逸らしながら俯いてごめんなさい、と一言謝った。


「帰れないのか?」
「うーん…走ればいいかなぁ、って…」
「それじゃあアイチの事だから明日風邪引いちまうだろ」
「う゛…」


図星を突かれて悔しいからと言い返そうとするも、結局何も言い返せずにぐぬぬ、と口ごもってしまったアイチ。
そんな様子をけらけらと笑いながら眺めていた三和がふと笑うのをやめてアイチを見つめる。


「…?三和くん?」
「アイチ、俺の傘に入ってく?」
「………えぇっ!?」


理解した瞬間わたわたと慌てだすアイチを尻目に三和は傘を少し上に上げて、スペースを作る。


「で、でも…三和くん濡れちゃう…」
「だーいじょぶだって!な?」


三和は我慢ならなくなり、そう言っても渋るアイチの手を掴むと、自分の傘の中に連れ込んだ。


「な、これなら濡れないしあったかいぞ」
「…うん…そ、うだね…」
「そういえばこれって相合い傘だな〜」
「あ…ほんとだ…」


ふわりとはにかんだアイチに、三和もまた微笑んで、二人でゆっくりと帰路に着いた。


配布元:妃月


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