黄黒


*恋単語 薬指


後ろから黒子っちをぎゅーっと抱き締める。読書中で一向に構ってくれないからそろそろ邪魔をしてみる。それでも黒子っちの視線は文字に注がれていて、オレに投げかけた言葉はやめてください、とただ一言だけ。頬を膨らませてぶー、なんて唸っても黒子っちは無言。だんだん苛立ってきてオレは黒子っちから本を奪い取った。
そこでようやく振り向いてくれた黒子っちはむっとしていて。


「黄瀬くん、返してください」
「嫌っス!だって返したら黒子っちまた読書に戻っちゃうでしょ」
「はい」


黒子っちになんの躊躇いも無く肯定されて傷付いた。いつもの様に涙は出なくて、変わりに出たのは心にもない言葉だった。


「じゃあいいっスよ、返すっス。読んだら帰っていっスよ?」
「黄瀬く、」
「ちょっと外出てくるっス」


嫌だ。黒子っちに帰ってほしくない。もっと一緒にいたい。黒子っちに触れたい。本読んでてもいいからオレの家にいて。


「すっ、みません、ボ、クが、言い過ぎました…っ!」
「へ?」


あの黒子っちが突然大声を上げたがら吃驚して流石に足を止めてそちらの方を見た。
黒子っちは顔を真っ赤にして少し涙目になってる。やっぱり黒子っち可愛いなぁ。


「すみません…ボクこういう事慣れてなくて、つい黄瀬くんに酷い態度とっちゃいましたよね…でも、黄瀬くんの事はちゃんと好きで…ぶっ」


黒子っちが言い終わる前に飛び込むように抱き付く。
腕の中の黒子っちは落ち着かないようでもぞもぞと動いてるけど正直それどころじゃない。なんか、嬉し過ぎて死にそう。


「オレの方こそ悪かったっス!黒子っち!好きっス!」
「黄瀬くんは悪くないです。……ボクも、です」

*


「黒子っち、黒子っち」
「はい」


そう言って黒子っちの手を掴んで薬指を握る。不思議そうにオレを見る黒子っちに見せつけるように薬指を持ってかぷりと加えた。


「!?」


ぎょっとして慌てて手を引こうする黒子っちを制して、黒子っちの指を甘噛みする。そこでようやく解放した。


「黄瀬くんは何を考えてるんですか!」
「へへ、見て、黒子っち。指輪みたいになったっスよ」
「え?」


そこはオレが噛んだ赤い痕が残っててそれを見た黒子っちはふっと笑ってから言った。


「じゃあこれを隠せるくらいの指輪、お願いしますね」
「…!もちろんっス」


配布元:妃月








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