さよならのあとに02


あの日から2週間が経った。カードキャピタルへはなんとなく、行けなかった。森川くんや井崎くんが何度も誘ってくれるんだけどその度にごめんね、と断っていた。
櫂くんは元々そんなに頻繁にカードキャピタルへは顔を出していなかったから、彼女が出来たのならなおさらかもしれない。なのにどうしても気が進まなかった。多分、会わなかったとしても、あの話をこれ以上聞きたくなかったからなのかもしれない。だから今日も僕は一人とぼとぼと帰り道を歩いていた。
チカチカと点滅する信号をぼんやりと眺めつつ足を止める。それはすぐに赤となり、目の前を車が通り過ぎて行く。しばらくするとまた青に変わり、周りにいた人たちがぞろぞろと歩き始める。そこで僕は向こうから来る人の波の中に、今一番会いたくなかった人を見つけてしまった。
すぐに今歩いてきた道を引き返す。逃げ出すように走り出す。さっきのところから少し離れたところでそろそろ大丈夫かな、と足を止め、乱れた呼吸を正そうとした瞬間だった。


「…っ、何故…っ、逃げるっ…!」
「〜〜〜っ!?」


声を聞いた途端、息が詰まった。後ろから荒々しい呼吸が重なる。
なんで君がここにいるの、そう言う前に強い力で路地裏に引きずり込まれていた。それは一瞬のことで、何が起きたかはすぐには分からなかった。状況を把握し始めて、気がついたときには目の前に既に息を整えている櫂くんがいた。


「…櫂くんが…どうして…」
「それはこっちのセリフだ。何故俺を見て逃げた。最近カードキャピタルにも顔を出していないようだが」
「それは…っ!」


なんで櫂くんがそんなこと知っているの。櫂くんこそカードキャピタルには行く時間がないでしょう?なんで、どうして、色々な想いがこみ上げてきて目頭が熱くなる。僕は涙が出ないようにきゅっと唇を噛みしめた。


「何なんだ」
「なんでも…ないよ」
「そんな顔をしてか」


そんなことは彼女に言ってあげてよ。僕のこと好きじゃないのにそんな優しい言葉言われたら勘違いしそうになっちゃうんだよ。
すき。好きだよ櫂くん。
僕の心から気持ちが溢れ出したのを表すように一粒だけ涙がぽたりとこぼれ落ちた。


「アイチ…?」
「好きなんだ。櫂くん、君のことが。」


ダメだと脳が、心が、言っているのに口から出てくる言葉は櫂くんが好きだということ。あぁ、これで本当に終わってしまった。これからはチームメイトですらいられなくなるだろう。
さよなら、櫂くん。さよなら、僕の、

そこで考えるのを止め、顔をあげると僕が予想していた表情とは違う表情をした櫂くんがいた。
僕はてっきり不快そうな、僕を軽蔑するような顔をすると思っていた。だけど目の前にいる櫂くんは驚いているけれども、決して嫌そうな顔はしていなかった。


「か…い…くん?」
「それは…本当のことなのか…」
「えっ…?……うん。でも、僕は男だし気持ち悪いよね。それに櫂くんには彼女…がいるんだよね…ごめんねこんなこと…」
「ちょっと待て。俺が好きなのはアイチ、お前だ。彼女とはどういうことだ」
「えっ、………えええぇぇ!!?」


吃驚して、思わず大声を上げる。幸い、通りの方までは聞こえなかったらしく、誰もこちらに気付かない。


「え…、だ、だって三和くんが、」
「俺はお前以外とは付き合う気はない。三和が言っているのはデタラメだ」
「な、なんだ…そっかぁ…」


安心した所為か、急に足の力が抜け、その場にへたり込んで泣いてしまった。
だけど櫂くんはそんな僕の頭をそっと撫でてくれて、僕が泣き止むまでずっとそうしてくれていた。






さよならのあとに
(改めてこんにちは、僕の恋心)







title:確かに恋だった

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放置してる間に消えたオチ。
もやもや悩むアイチが書きたかっただけ。
ちなみに三和くんは確信犯


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