永久のクレオメ05


コンコン、と控えめなノックがされ、もう昼過ぎだったのか、と気付かされた。
そういえば前の奴は怪我をしたとかで、新しい奴を用意する、と三和が言っていた気がする。まぁ、俺には関係ないことだが。そんなことを考えていると、扉の向こうからは、やはり控えめな声が聞こえてきた。


「失礼します。お茶をお持ちしました。よろしいでしょうか」


その声に何処か懐かしいような感覚に襲われ、扉を一瞥して、構わない、と一言だけ告げる。
ガチャリ、と扉を開けて入って来たのは確かに昨日までの奴とは違う奴だった。
ブルーの髪に瞳、俺はそれを何処かで見たことがあった気がした。
何処だったかと目の前の書類と睨み合いつつ思案していたが、考えても仕方ないと思い、取り敢えず名前を聞いた。


「せ、先導アイチと申します。」


アイチ、心中で呟くとやはり其処には得体の知れない何かがあった。しかしその正体が解らずにいると、横ですすり泣くような声が微かに聞こえ、振り向くと其処にはアイチがぽろぽろと涙を零している姿があった。
理由が解らず、声をかけるとアイチは自分が泣いていたことに気づいていなかった素振りを見せたが、すぐに目にゴミが入っただけだと言った。本当にそれだけだと言い張るから俺はそれ以上は何も聞けず、渋々黙った。
アイチは泣いたことを誤魔化すように素早く作業を終わらせると、早々と部屋を後にしていった。

色々気になることはあったが、向こうとしては初対面の、しかも主人と従者という関係なのだから、話してはくれないだろうと何故か少し残念に思っている自分を不可思議に思い、その思考を振り切るように気分転換でもしようと、窓を開けた。
窓から見える一面の木々の青々とした葉がとても綺麗だった。


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