大きくなりたい!


▼中学生



 思わずごくりと唾を飲み込んだのは仕方のないことだろう。何せ、今日は身体測定──つまり、二年のあいだに伸びたはずの身長を確かめる日なのだから。
「……ルークは去年何センチだったの?」
「ええーっと、ああコレだな!」
 ほらと渡されたのは各生徒に配られた記録用紙だった。こんな簡単に見せるものじゃないんじゃないかな、とは思いつつも渡したのは本人である。尋ねたとおり気にもなるので身長の項目だけそっと覗かせてもらう。
 すう、と目を細めても、用紙を遠ざけても記入されている数字が変わることはない。──遊我の身長と十センチ以上は離れているその数字は。
「どうして……ッ!」
「ゆ、遊我、そんなに気にしてたのか……?」
「そうだよ!? 悪い!?」
 ぷんすこと息を巻いて頬を膨らませる遊我は、遊我の態度にショックを受けて固まるルークを置いてずんずんと先に歩いて行った。

「なるほど……それであんなに……」
 昼休み、食堂に集った四人だったが学人とロミンは遊我の不機嫌の理由に首を傾げる。そして涙目のルークから訳を聞き出しどうしたものかと顔を見合わせたのだった。
「ゆ、遊我くん! 成長期はまだまだこれからですよ、きっと!」
「そうよ! 諦めちゃダメよ!」
「……ガクトもロミンも、ボクより身長高いよね……」
 しまった。墓穴を掘ってしまった。学人とロミンはすぐさま「牛乳飲んでる!?」「遊我くんは徹夜が多いですからね、睡眠は大事ですよ!」と対策を並べる。だが静かにため息を吐いて、ますます落ち込んでしまったようすの遊我に何も言えなくなってしまった。牛乳は飲んでいたし、徹夜した過去はどうにもならない。そういうことなのだろう。
「いっそボク自身を改造して……、」
「わー! 人間をやめちゃダメだ遊我ぁ〜〜!!」
 虚ろな目で身長を伸ばすロード、と呟く遊我。その遊我の腰にしがみついてやめさせようと足掻くルーク。SNSから情報収集をしようとするロミン。ならば私が作ってみせましょう、と蘭世と凜之介に渡された料理本から栄養バランスのとれたレシピを探し意気込む学人。

 ──そんな、もはや昼食そっちのけで騒ぐ四人を離れた席から見ていたロアは、定食のからあげを摘み上げたまま呆れた表情で言う。
「……なーにやってるのかね、遊我ちゃんたちは」



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