いつまでも待つと思うなよ


※悪魔×魔法使い
 ユウガ表記



 正直に言ってボロボロの小屋のような家。そんな場所でユウガは何やら機械を弄り続けている。時折使い魔ロボットのカイゾーが手伝ったり意見を言ったりしてわいわいと楽しそうだ。それを後ろから見ていたロアはたいそうつまらなさそうな顔を隠しもせず、羽を広げた状態でぷかぷかと浮いたまま観察していた。

 ここは人間界。そして悪魔のロアと、魔法使いのユウガは元々魔界の住人だ。
 ある日人間界に行ったユウガはそれ以来ぱたりとすがたを見せなくなってしまい、ロアは様子見がてらにこちらに遊びに来た訳なのだが。
「え? まだ帰るつもりないよ」
 この発言である。思わず「ハァ?」と言ったロアに、それはもう今までに見たことないほど目をきらきらと輝かせたユウガは、人間界の技術の高さをたっぷりと語ってくれた。ぶっちゃけほぼ理解できなかったので半分は聞き流してしまったけれど。
「ロード作るのに人間界の方が色々と便利だし」
 魔法使いなのに発明をするのが趣味だったユウガは魔界にいた頃から変わり者だと呼ばれていた。もちろん、趣味なのだからと気にしない者も大勢いたし、むしろ面白がった連中だっていた。何しろその後者の筆頭がロアなのだ。興味本位で近づいて、うっかりユウガ本人に惹かれた結果、いつの間にか目で追ってしまうようになっていた。もちろん本人には秘密だ。
 そんな中突如として人間界に消えたユウガをロアが追わない選択肢はなく。連絡する手段がなかったとはいえいきなり押し掛けるみたいに訪問しても、ユウガは笑顔で迎え入れてくれた。久しぶりにすがたを見られたことに胸を撫で下ろしたものの、しばらく魔界に帰るつもりはないという宣言に再び機嫌が急降下した。しかしわざわざ足を運んだのにこのままとんぼ返りというのも癪で、こうしてロアは不機嫌ながらもこの場に居座っているのである。

「……そういえば、この間ロミンたちもここに来たんでしょ」
「う、うん……」
 どうやらロアの予想通り、以前ここを訪れた仲間たちにも帰ってきてほしいとお願いされたようだった。
「それでも帰らないって言ったんだ」
「みんな分かってくれたし」
『かなり大荒れしてましたけどネー』
「ちょっとカイゾー!? 余計なこと言わないでいいから!」
「……ま、そうだろうね」
 ユウガが大好きだと公言する奴らのことだ。相当粘っただろうが、最終的には本人の意志を尊重したに違いない。
 しかしロアはそんなに甘くない。ユウガが帰らないのであれば、ロアが通えばいいのだ。
「じゃ、今日のところはひとまず帰るよ。またね、ユウガちゃん」
「うん? ……また!?」
「何。来ちゃまずいわけ?」
 ピタリと動きを止めて振り返ったロアに、ユウガは「そうじゃないけど、」と言いつつ困った表情を浮かべている。
「……なんでロアはそんなにボクを連れ戻したがるの」
「言ったら帰ってきてくれる?」
「ええー……じゃあ聞かない」
「チッ……」
 ユウガの反応が気に入らなくてロアの口から思わず舌打ちが出た。だがそんな態度にも慣れたもので、ユウガは再びロード作りに集中し始めてしまった。いつもどおりすぎる姿勢に手応えのなさを感じながら、今度こそロアはユウガの家を出た。

 せめてユウガが魔界に戻るまでは、ロアの気持ちを明かすつもりなど全くない。まさか好きだから、近くにいたいから戻れだなんて、そんな女々しいこと言えるはずがない。
「あーあ。いっそユウガちゃんがホントに人間だったら眷属にしてやるのに」
 なんて、詮無いことを呟くくらいにはロアの日々はユウガがいなくなってから退屈に満ちていた。つまらなそうに尻尾を垂らし、ロアは魔界に帰るべく空へと飛んだ。次はいつ来てやろうかと、既にロアの頭はそればかりを考えていた。



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