甘いかおり、苦い味


びゅううう、と強く吹きつける風にアイチはその身を震え上がらせた。


「うう…さむ…」


受験生のアイチはもちろんのこと勉強をしなくてはならなくて、今日も遅くまで塾に残っていたのだった。
はやく家に帰って暖かい部屋にこもりたい、と考え足を速めようとしたとき、通りがかった公園に人気を感じ振り向いた。


「あっ!」


公園のベンチにはアイチの想い人である、櫂トシキが座っていた。
その姿を見て、アイチは自分の身体がぽかぽかと暖かくなっていくのを感じた。

一方、アイチの声で櫂も気づいたらしく、アイチの方へ近づいてきた。


「…アイチか。何の用だ」
「あ…えっとね、塾の帰りで通りかかっただけで…。櫂くんは何してたの?」
「俺も学校の帰りだ。用事があって遅くなったがな」
「そっか」


そこで会話が途切れてしまい、二人の間には沈黙が訪れた。
アイチは他にも何の用事だったの?、だとか今日寒いね、など言おうとしたが、櫂はあまり話さないタイプだというのは分かっていたし、前のように変に詮索してしまっては嫌われてしまうかもしれないと思い、それ以上は話そうとはしなかった。


「えっと、それじゃ…」
「…待て。」
「え?」


突然手を掴まれ呼びとめられた。
アイチは櫂に手を掴まれたことに頬を真っ赤に染めた。
それを櫂は寒いからだと思い、手を掴んだまま引っ張り公園にある自販機の前まで来ると小銭を入れ、ホットミルクティーを買い、飲めというようにアイチに渡した。


「あ…」


ぱっ、と手を離されたことでようやく状況を把握し始め、スタスタと歩いていく櫂にいいのだろうかとおそるおそるついて行く。
櫂が再びベンチに座り、隣に座るのは恥ずかしかった為、少し離れるようにしてアイチも腰を下ろした。

櫂にもらったミルクティーを見る。ラベルにはほのかに甘いミルクティー、などと書いてあり、ぱき、とプルタブを開けこくりと一口飲んでみる。

―確かに、甘い。


「櫂くん…」
「なんだ」


ありがとう、と伝えると別に、という予想通りの答えが返ってきた。
アイチはその優しさに胸がきゅっとなってしまうのを誤魔化すように、ミルクティーを飲み干した。

再び飲んだミルクティーは、ほろ苦い味がした。







甘いかおり、苦い味
(なんでもないのに優しくされると、胸が苦しくなるのを君は知らない)







title:確かに恋だった

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ん〜〜〜〜〜アイチきゅんの片思い話をシリアスに書こうとしたらよく分からない話になってしまった!!
櫂(→)←アイって感じですね!
櫂くんのことが好きなんだけど想いを伝えられなくてでも優しくしてくれる櫂くんが好きでたまらなくて好きじゃないのにこれ以上優しくしないで、みたいな…そんな…(伝われ)
ところでこれかおりじゃなくて味になってますねすみません


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