きみが泣いている夢を見たから
「櫂くん?」
今朝、櫂から『家に来ないか』とのメールが来て、突然どうしたのだろうかと思いつつふたつ返事で返信し、アイチは櫂のマンションを訪れた。出迎えられ、リビングに通されると、カーペットのすかれた床に腰を下ろした。するといきなりアイチを引き寄せ、腕の中に納めるとそのままぎゅっと強く抱きしめ、黙ってしまった。
その状態が10分程続いて、ようやくアイチが口を開いた。
「あの…櫂くん…なにかあったの…?」
「……」
ふと、そこでアイチは櫂が僅かだがかすかに震えてることに気がつき、赤子をあやすように優しく話しかけた。
「櫂くん…大丈夫だよ。僕はここにいる。だから、なにがあったか…話してくれる…?」
「…アイチ」
その声に安心したのか、ようやく落ち着いたらしい櫂は、ゆっくりと話始めた。
「夢で…お前が泣いてたんだ…」
「うん…」
「理由もなく、ただひたすら泣き続けるばかりで…俺は何もできなくて、そこに立ち尽くすしかなくて…」
「うん…」
「夢だと分かっててもお前の笑顔を見たらどうしても安心してしまって…我ながら女々しいと思うが」
「ううん。逆に話してくれてありがとう。僕ね、少しでも櫂くんの役に立てたらねって…わっ」
アイチが言い終わらないうちに櫂は自らの唇でアイチの唇を塞いだ。
柔らかい唇を堪能し、ゆっくりと舌を入れ、歯列をなぞる。
「ふっ…ん…っ…」
名残惜しいように離すと、アイチは呼吸を整えるように息をした。
かいくん、と紡ぐ言葉は呂律が回らず櫂の胸をどきりとさせた。
「僕は大丈夫だよ。あの日君から貰ったカードと言葉のおかげで何度も救われた。そして今は櫂くんが傍にいてくれる。だから僕はもう泣かないよ」
「アイチ…」
「でももし、僕が不安になって泣きそうになったら…」
さっき僕がしたみたいに、ぎゅって抱き締めてキスしてくれる?と問うアイチに櫂はもちろんだ、と答えもう一度キスをした。
きみが泣いている夢を見たから
title:確かに恋だった
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キスの描写とかは苦手なのでスルーしてください!!!!
いつもはアイチばっかり女々しいからたまには櫂くんも不安になっちゃったりして甘えてるといいなーと思いました。