なかなか押せない送信ボタン


「うーん」


一人うんうん唸りながらアイチは携帯を目の前にし、考え込んでいた。
原因は今日のカードキャピタルでのことが関係していた。
いつものように三和と櫂と雑談を交わしながら(主に会話しているのは三和だったが)ファイトをしているとアイチがふと思い出したように話題を切り出した。


「あ、そういえば僕、携帯買ったんだ」
「へぇ、まじか。じゃあ番号交換するか?」


三和はそう言うと鞄から携帯を取り出している。


「えっ!?でっ、でも、」
「ん?何か駄目なのか?」
「そういうわけじゃないんだけど、」
「だったらはやく携帯出せって!」


アイチも鞄から携帯を取り出すと、慣れない手つきでぽちぽちと操作し始めた。


「あれっ、ここってどうすれば…」
「貸してみろ」
「えっ」


今までずっと黙っていた櫂が口を開いたかと思うと、アイチの携帯を取り上げ素早く操作して番号を交換し、アドレス帳に登録した。


「かっ、櫂くん!ありがとう!」
「…別に。見ていられなかっただけだ。」
「うう…ごめんなさい…」


素直じゃない奴、と苦笑する三和はそんな親友にすかさずフォローを入れることにした。


「かーいー、お前もアイチと番号交換するか?」


ぎょっと目を見開いて驚いたのはアイチの方だった。
おろおろと櫂の返答を待つ姿はまさに恋する乙女だ。一方櫂の方も先程からそわそわとしており、三和はいつフォローしてやろうかと思っていたのだ。


「…同じチームなら連絡取れやすい方が楽だろう」
「…!いいの?」
「…ああ」


とことん素直じゃない奴、とさすがの三和も呆れ気味だったが今の櫂にはそれが精一杯らしく、なんだかんだでアイチは三和と櫂の二人をアドレス帳に登録することになった。

話は冒頭に戻り、何故アイチがここまで考え込んでいるのは櫂に送るメールの内容だった。

三和へのメールはすでに数十分も前に送信し、返信すら返ってきていたのだが櫂へのメールをどうするかでずっと悩んでいてしまっていた。

(うーん…三和くんと同じような内容でいいと思ってるんだけど…やっぱり…)

いつもは口数が少ない為、あまり話せてないがもしかしたらメールなら、と期待してしまい他にも何か書こうと悩み、手が止まっていた。
散々悩み、今度デッキを見てほしい、と一言付け加えたところでドアをノックし、エミが入ってきた。


「アイチー?お風呂上がったから次入ってってお母さんがー…」
「わああああ!!!エミ!!?」


あ、と気づいて携帯画面を見るとそこには「送信しました」の文字。突然エミが入ってきたことに驚いて送信ボタンを押してしまったようだ。


「アイチ?」
「あぁ、うん、分かった、すぐ行くよ、」


動揺しながらなんとか答えると、なるべく早くね、と言い残すとエミは部屋から出て行った。


(あああぁぁ…どうしよう…送っちゃったよ…)


デッキを見てやるとの返信が届き、アイチは風呂どころじゃなくなってしまい早くお風呂に入りなさいって言ってるでしょ、とエミに怒られてしまうのはまた別の話。






なかなか押せない送信ボタン







title:無気力少年。

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櫂くんにメール送れなくておろおろしちゃうアイチが書きたかった。
実は櫂くんもどう送ろうかと携帯持ったまま悩んでたとか違うとか。
ア行登録とか専用フォルダとか作っちゃったりしてると可愛い!


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