Cute!


※ジータちゃん出てきませんがグランくんとジータちゃんが双子の姉弟設定です。





 物資を補給するために立ち寄った島。ちょっとした依頼を受けるもすぐに済み、せっかくだからともう一日停泊し、ゆっくりしていくことになったグランたちは、買い物に出掛けたり自室でのんびりと過ごすことにしたりとそれぞれ自由にオフの日を満喫していた。
 パーシヴァルも後者のうちの一人で、自室で書物を読むと言っていた。グランは今朝食堂で聞いた彼の予定を思い浮かべながらその扉を叩いた。

「なんだ」

 扉越しでも分かる凛とした声。恐らく足音ですでにグランが訪れたことを察したのだろう。ぶっきらぼうに返ってきた応えに、にんまりと笑って勢いよく扉を開く。

「パーシヴァル!」

 弾んだ声に、パーシヴァルは本に落としていた視線をグランへと向ける。もう少し静かに開け、と声を掛けようとも思ったがやめておいた。
 いつもは団長として振舞っているが、時折見せる今のような子どもらしい仕草は、まだ十五だということを思い出させる。

「じゃーん!」

 そわそわと落ち着かないままグランは一枚の紙を掲げた。どうやらこれがグランの気持ちを浮き立たせているらしいが、何かの資料にしか見えなかったパーシヴァルは許可を取ってその紙を手に取った。

「なんと!僕とビィとルリアとジータで歌う曲です!」

 目で文字を追うと同時にグランは待ちきれないとばかりに告げた。
 ずっと共にしてきた相棒、それに双子の姉、妹のように可愛がっている子と一緒に歌えるということが嬉しかったらしい。パーシヴァルはそれが微笑ましく思え、グランの頭を軽く撫でた。いつもは恥ずかしがって逃げてしまうその行為も今のグランは気にせず受け入れる。

「俺達の時と同様の依頼か」
「うん。パーシヴァルたちの時かっこよかったよね。僕、四人を見て憧れてたんだ」

 だから僕も歌えるの楽しみだな。
 あどけない笑顔で答えるグランにパーシヴァルは内心で息を吐いた。我らが団長は素でこういうことを言うから色んな奴の興味を引くのだ。

「フッ…可愛いことを言う家臣だな」
「まだ家臣って認めてないですー」

 揶揄すればいつもと変わらない返事。この強情なところに惹かれてしまったのだから仕方がない。
 話を戻すためにそれで、とパーシヴァルは告げる。

「報告だけが用件ではないのだろう」
「あ、うん。衣装について相談したくて。エリュシオンで良いと思う?」

 衣装に悩んでいる、とグランは打ち明けた。コルワに相談しようとも思ったけど、女の子じゃないからなんかちょっと言い出しにくくて、と続けて。
 それで訪れたのが自分のところだったことに優越感を抱きつつ、改めてパーシヴァルはその文書に目を通す。エリュシオンはハーピスト系の上位ジョブであるため、確かに敵を魅了させる程の歌声を出せるかもしれない。しかし。

「いつも通りでいいだろう。その方がこの曲には似合っている」
「ほ、ほんと?でも僕そんなに上手くないよ?」

 グランは自信がない、とぽつりと零す。だがパーシヴァルは堂々とした態度でグランの背中を押した。

「楽しく歌えばいい。俺が保証しよう」
「そっか……うん、ありがとうパーシァル」

 贈られた言葉を噛みしめる。胸に響くのは彼がグランにとって特別だからだろう。口元を緩ませたところでパーシヴァルの次の言葉に固まってしまった。

「思ったことを言っただけだ、構わん。あの衣装も可憐だが、普段通りのお前が一番好ましいと思っているからな」
「…………へ?すき、ってこと?」
「ああ」
「あ、ああ!曲のこと?僕も気に入ってるんだー、へへ………それじゃあジータ達にアドバイスのこと話してみるね!また!」

 顔の熱がどんどん上がっているのが分かる。早口で捲し立てると、これ以上は耐えられないとグランは慌ててパーシヴァルの部屋を出た。
 ばたばたとわざと音を立てて走る。ラカム辺りに見つかったら注意されるだろう。それでもどうにか気を紛らわせないと余計なことを考えてしまう。例えば、先ほどパーシヴァルが言った好ましいという言葉の別の意味であったりとか。

(ずるいなあ…パーシヴァル、ああいうことさらっと言っちゃうんだもん……本気にしちゃうじゃん)

 つい都合の良い方へと考えてしまう頭を振る。このままジータ達のところへ行くには顔が赤すぎるだろう。ルリアは心配してしまいそうだ。ビィとジータは長年一緒にいるだけあって全て見抜かれてしまうかもしれない。一旦部屋に戻って頭を冷やそう、とグランは自室へと駆けていった。





 一方、慌ただしく出て行ったグランを見送ったパーシヴァルは口元に手をあてていたものの、上がった口角は隠せていなかった。
 たった今パーシヴァルが言った好きだと言ったのは、曲のことを指してではなかった。グランがどのような反応をするか少し試しただけだったが今の反応を見る、グランはパーシヴァルの事を意識している様子で。

(家臣の方はまだ決着がつきそうにないが、こちらは結果が見えているようだな)

 どうやって己の告白に頷かせようかと企むパーシヴァルの事など、グランは知る由もなかった。



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