迷子はいない
▼EXTRA GAMEの7話を読んで書き殴った話。
▼僕司さんのメンタルが弱め。
二度目の敗北。
いや、試合に勝ったのだから少し違うのかもしれない。
だが僕はあのとき、奴からアンクルブレイクを受けたとき、確かに"敗北"を感じたのだ。
***
「それは違うでしょう?」
テツヤは否定した。
「僕に失敗は許されないんだ」
「はあ…ボクはウィンターカップで学んでくれたんだと思ってたんですけど。それはもう一人の赤司くんだけだったんですね」
そう言うとテツヤはため息を吐いて僕の頭をぽんぽんと撫でだした。以前までならば頭が高いぞ、と言っていたところだが、テツヤに惚れてしまった今はそれが嬉しく思う行為になっている。
「でも、敦が怪我をしたのは僕のせいで、」
「それも君のせいではありません」
僕があんな失態を犯してしまったから敦が怪我をしたのは事実だ。それなのにテツヤは首を横に振る。
もう一人の僕…アイツはテツヤに、誠凛に負けても吹っ切れて次へと進み始めていたが、僕は立ち止まったままだった。勝利だけが絶対だったのに、それを失ってどこへ行けばいいのか分からなくなった。迷子のように彷徨う子どもみたいに、僕はひたすら暗闇を歩いていた。
アイツを見ていたら、勝利とは、敗北とは何なのかと、思考がぐちゃぐちゃになっていった。
「赤司くん」
「テツヤ…」
「確かにあのときはピンチだな、って思いました」
「…っ」
「でも、結果は?みんなで勝利を掴めたでしょう?そのとき君はどう思いましたか?」
「……嬉し、かった」
「はい。ボクも本当に嬉しかったし、日本のバスケもすごいんだって見返せて良かったです」
テツヤは両手で僕の右手を握った。
先ほどからテツヤはまるで僕を小さい子相手のように扱う。
「だから、赤司くんはバカなこと考えてないで自信持ってください。…でないと、こっちが調子狂います」
「……うん。ありがとう、テツヤ」
でも、ゆっくりと吐き出される言葉はじわじわと心に沁みていく。
行く先が分からなかった迷子の僕は、差し出されたテツヤの手をとって歩き出した。