ツンデレ赤司くんと幼馴染み黒子っち04


告白をしようと決めてから僕はずっとチャンスを窺っていた。
まずは二人きりにならないと出来ないため、いつ誰が来るか分からない学校は却下だ。となると、テツヤをどこかに連れ出すか、そうじゃなければ。

「そうだ、テツヤの家に行こう」
「………またお前は」

名案だと手を打てば、横にいた真太郎は頭を抱えて深々とため息を吐いた。なんだ、何か問題でもあるのか。

「今のお前がいきなり家に押しかけて、黒子が家に入れてくれると思っているのか」
「………」
「っ!、俺が悪かったから無言でハサミを構えるのはやめるのだよ!」

机にあったから片付けようとしただけだったのに。真太郎は僕がそんな物騒なことをすると思っているのか。
ともあれ確かにいきなり家に押しかけるのも良くないな、と他に何か策はないものかと頭を捻らせていれば、廊下を歩いている青峰大輝と黄瀬涼太を見つけた。
そうか、彼らに話をして協力してもらえば良いのか。
僕は二人を引き止めて話を聞こうと廊下へ向かった。

*

結果的に二人に声を掛け得た情報は大きな収穫だった。
なんと週末にテツヤから勉強を教わるため家を訪れるらしい。これはラッキーだ。二人を連れて行けばテツヤの家に上がることも可能なはずだ。
早速僕は週末に備えてテツヤとの会話を考えておくことにした。今回こそはテツヤに良いところを見せるのだ。そしてなんとか二人きりになって告白をするんだ。
そして張り切って迎えた週末。テツヤは驚いた表情を浮かべながらも僕を家に入れてくれた。真太郎と敦も連れてきたのが良かったのだろうか。
久しぶりに入ったテツヤの部屋は懐かしくて少し緊張した。だがこんなことで緊張してはいられない。僕はやらなければいけないんだ。

「……あの、それで今日は一体…」
「何って、黒子があんまりに成績が伸び悩んでいたようだから教えに来てやったんだよ」

やらかした。早速やらかした。
ちゃんと「テツヤの成績が心配で久しぶりに教えようと思って」って言おうと考えていたのに。もうこんな口嫌だ窓から身投げしたい。
しかし言ってしまったものは取り消せない。せめて必要以上のことはもう喋らないようにしようと自分でも信用のならない誓いを立てる。
しかしそれもすぐに崩れ去ることになった。
青峰大輝と黄瀬涼太から意識を外そうと敦と真太郎をつけたのにテツヤは四人を微笑ましいとばかりに見つめていたから。
その笑顔が僕にとって久しぶりに見れたテツヤの笑顔で。笑顔を引き出したのが僕以外ということ、僕にはこんな顔をさせられなくなったということ。それを改めて実感させられてしまった。
だからつい、さっきの誓いなどあっという間に破って口を開いてしまった。

「…ふーん…僕が直々に教えてやっているというのに余所見とはいい度胸だね、難易度をもっと上げた方がいい?」
「すみませんやめてください」

テツヤの笑顔はすぐに消え去り、視線はノートへと落ちた。テツヤが奴らを見なくなったのは良かったが、僕に見向きもしないことも気に入らない。ああ、本当に僕は自分勝手だ。
テツヤの解答を見ながらぼんやりしていると、突然テツヤの手がピタリと動きを止めた。分からないのだろうか。
しかしテツヤはこちらを振り向いて、あろうことか僕の額に手をあてた。
そういえば昔、テツヤはこうして僕の体調を窺っては心配してくれていたな。まさか起きている時にこんな幻覚を見るとは。
あまりのパニックに馬鹿なことを考えていたが、テツヤの気持ちのいいひんやりとした手の温度は紛れもなく事実で。

「……、熱は、ないみたいですね。やっぱり君どこかで頭を…」
「…っ!」

咄嗟にとった行動が、テツヤの手を思いっきり払うという最低なことだった。しかもそのことに気が付いたのはテツヤの家から逃げ出しだあと。
情けないことに僕はテツヤを叩き逃げしたらしい。間近で見るテツヤの顔は今の僕には刺激が強すぎたのだ。
しかし僕の無駄に優秀な脳は鮮明に先程の光景を再生していた。

「僕は、テツヤに、なんてことを、」

人生での詰み、というものを僕は初めて味わった。さすがにこれは確実に嫌われただろう。もう顔も合わせたくないほど嫌われたはずだ。自分で言ってて死ぬほど落ち込む。
それに真太郎と敦にもいい加減見限られたかもしれない。告白すると言っておいてこのザマだ。死にたい。
今までのテツヤとの思い出が走馬灯のように流れていく。
ああ、なんでこんなことになったんだろう。

「赤司くん!」

今度は幻聴か。
今は藁にもすがりたい気分の僕は幻聴のした方を見た。


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